みなさんは服部桜(はっとりざくら)という力士をご存知でしょうか?
日本相撲協会の公式プロフィールによると、1998年(平成10年)7月16日生まれ、神奈川県茅ケ崎市出身で式秀部屋(元前頭北桜)に所属する19歳(2018年6月6日現在)の青年です。
身長約176㎝、体重約80㎏。体格を見ると、一般男性に比べればかなりガッシリとした体格(僕と身長は同じぐらいですが10㎏以上重いですね)で、中学卒業後の2015年9月に初土俵を迎えて以来今年でデビューしてから三年目となります。
この服部桜、残念ながら現在の番付は大相撲の番付の中でも一番下にあたる序ノ口(じょのくち)に所属しているわけですが、相撲ファンの間ではかなり知られた存在です。
それどころか、史上もっとも有名な序ノ口力士と言ってもいいぐらいなんですが、今回はこの服部桜というお相撲さんを紹介したいと思います。
(画像引用:「式秀部屋」公式Facebookより)
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”個性派揃い”の式秀部屋所属
服部桜自身を紹介する前にやはり触れておきたいとのは所属する式秀(しきひで)部屋です。
現在の式秀部屋を管理するのは元前頭の北桜(きたざくら)で僕と同世代の親方ですが、式秀親方としては九代目、独立した部屋としては二代目の親方として指導を行っています。
この式秀部屋や式秀親方、もしかしたらテレビで見たことある方も多いのではないでしょうか。
キラキラネームの四股名をもつ力士たち
式秀部屋で何と言っても有名なのは所属する力士たちの四股名のキラキラネームぶりですね。
パッと並べてみただけでも
- 爆羅騎 源氣(ばらき げんき)
- 桃智桜 五郎丸(ももちざくら ごろうまる)※現在は澤勇 智和(さわいさむ ともかず)
- 宇瑠寅 太郎(うるとら たろう)
- 覇王 万蔵(はおう まんぞう)
- 冨蘭志壽 学(ふらんしす まなぶ)※フィリピン出身
- 大当利 大吉(おおあたり だいきち)
- 太牙虎五郎(たいが とらごろう)
この他にも育盛(そだちざかり)なんて名前の力士もいたわけですが、とにかく一度聞いたら忘れられない四股名ばかりです。
親方の趣味がビーズ編み
親方の式秀親方と言えば身長が190㎝近くあり、尚且つ結構な強面なんですが趣味がなんと”ビーズ編み”です。
このギャップもあってか、弟子の四股名以外にマスコミの格好の取材対象になっているわけですが、作品をテレビを見る限り中々の”ガチ”ぶりです(笑)。
服部桜を有名にした一番
さて、部屋の説明はこのあたりにして、肝心の服部桜についてフォーカスしていきたいと思います。
この服部桜、本格的にデビューしたのは2015年の十一月場所なのですが、その翌年の取り組み内容で彼は一躍有名になってしまいます。
事件が起こったのは2016年九月場所三日目。
服部桜にとっては二戦目の取り組み(幕下以下はひと場所七番しか行われません)だったのですが、これについては動画を見ていただいたほうが分かりやすいでしょう。
左のひょろっとしたのが彼ですが当時は70㎏程度しかなかったようですが・・・
無気力相撲で厳重注意
初めてみた方は何が起こっているか分からない方も多いでしょう。
僕も初めて見たときは”はて、何が起こっているの?”と思いましたが、一度目は手つき不十分、二度目はヘッドスライディング、三度目は尻餅のあともうその場の全員が”そのままやっちゃえ”てことで押し出しという形で幕引きとなりそうになったものの、当然土俵下の審判団はそれを許さずやり直し(笑)。
最終的にはへっぴり腰のまま始まりはたき込みのような形で終わっています。
この明らかに負けようとしている行為が”無気力相撲”と判断され、スポーツマスコミなどに取り上げられたのは少し前の話ですね。
当然親方の式秀親方と服部桜は協会に呼ばれこっぴどく怒られたようです。
実は二回目、前科があった
この服部桜ですが”無気力相撲”は実は二回目だったそうです。
上記の動画は有名な動画なので僕もよく知っていたのですが、彼はデビューした2015年十一月場所の五日目にも同じようなことをやらかしているそうです。
この時は開始と同時に尻餅をついて”バランスを崩した”との言い訳で事なきを得たようです。
ただ、この二回無気力相撲、大相撲界隈ではそこそこ話題にはなっていたようですが、世間ではまったく騒がれていませんね。
モンゴル勢同士の暴力問題や現役力士の無免許運転&身代わりなどに比べると、ワイドショーでそれほどやり玉に挙げられなかったのは序ノ口という一番下のクラスで起こったのが幸いしたのでしょうか。
まぁ動画を見ると分かりますが、序ノ口の取り組み序盤も序盤に行われる取り組みなのでかなり閑散としてます。
相手の錦城とは何者
この二度目の”無気力相撲”は約二年前のものなんですが、服部桜は幸いにしてまだ現役です。
相撲が嫌でしょうがないのであれば、すでに引退してこの世界から退いているでしょうし、なぜこのような行動に及んでしまったのでしょうか。
体調不良+相手がバリバリの武闘派だった
まず情報によるとこの一番に挑むにあたり服部桜はけいこで首を痛めていたそうです。
当時70㎏程度しか体重がなかった彼が毎日のけいこや本番で体に不調をきたしたとしても不思議ではありませんね。
そして肝心の相手ですが、この時の対戦相手は九重部屋(大関千代大海)の錦城(きんじょう)という力士だったそうです。
現在は2クラス上の三段目にいて、四股名も千代大豪(ちよたいごう)という名前に変わっているそうですが、その経歴を見てみると中々の相手ということが分かります。
錦城の経歴
Wikipediaによると
- 1998年2月28日兵庫県尼崎市生まれ
- 身長184㎝体重122㎏
- 小学校5年生の時に空手をはじめ、中学校の時にはヒョードルにあこがれて総合格闘技をはじめる
- 高校を一年で中退し解体工として働きながら道場で腕を磨く
- 同時期に始めたアームレスリングで頭角を現し、兵庫県(オープンジュニア)で優勝
- 翌年全国大会(ジュニア)で準優勝
- 九重部屋の知り合い連れられて見た取り組みを見て角界入りを決める
- デビュー前に行われる前相撲では日本大学相撲部出身の梅野に激しい張り手を繰り出したものの負けるが、勝った梅野は脳震盪で立ち上がるのもままならない状態だった。
ええと・・・
マジもんじゃないですか(笑)
経歴だけを見ると、相手は自分より一学年上で身長は10㎝近く大きい。
しかもどう見てもやんちゃ系で、腕っぷしは相当強い、どころか同世代では全国トップクラス。
かつ、前相撲では恐怖の内容。
いやあきませんて、殺される・・・(冷や汗)
なんか経歴だけを見るとブルってもしかたないですよね。
しかも当時服部桜は今よりもさらにヒョロガリ君ですし、自分の部屋の兄弟子たちより強そうです。
経歴を見ると一気に許したくなりました(笑)。
通算成績一勝
さて、ここまで読んでいただくとお分かりかもしれませんがこの服部桜、かなり弱いです。てか一勝しかしていません。
一応中学時代は陸上部に所属し、1,500mなどの選手だったようなので、基礎的な運動神経はありそうですが、やっぱり体格的な問題でしょうか。
ここまで前相撲をのぞくと十六場所を戦ってきたわけですが、一勝しかしていないので当然十六場所連続で負け越しで、番付も序ノ口のままなんですよね。
そんな彼がデビュー四場所目でこのような対戦相手と戦わないといけないとなると妙に納得してしまうわけです。
2018年五月場所終了時点での通算成績は1勝110敗1休(前相撲を含むと通算十七場所)となっています。
ついに双葉山の記録を超える
現在相撲の連敗記録を絶賛更新中!
大相撲の連勝記録と言えば昭和初期の大横綱双葉山(ふたばやま)の69連勝というのが最高記録ですが、連敗記録の最高記録はこの服部桜の88連敗となっています(2018年五月場所終了時点)。
歴代二位の記録が最高位序二段の森麗(もりうらら)の32連敗だそうなので、これまでの大相撲の中でも特筆すべき弱さなんですよね。
だから彼が初めて勝利した通算23戦目での勝利では、本人よりも周りが喜んだと言われています。
現在はその勝利後88連敗で、2017年は未勝利でした。何か競馬のハルウララみたいですね。
服部桜が勝利した澤乃富士とは
ここで気になるのは史上最弱クラスとも言える服部桜が唯一勝った力士ですが、伊勢ケ浜の澤ノ富士という力士だったそうです。
今は色々なところで情報が集められるので彼について調べてみると、現在も現役で一度序二段に上がっていますが、今は序ノ口にまた戻っています。
気になる強さですが、五月場所終了時点での成績は20勝72敗(十四場所)で一度も勝ち越してはいないものの(それでも序二段には上がれるみたいですね)、そこそこは勝っているようですね。
身長が170㎝で体重が108㎏で学年で言えば服部桜の二つ下のようなので、体重以外は経験を含めてこちらが上なので、少し気分的な余裕はあったのかもしれません。
幕内以外でも楽しめる
最後に、最近はネットだとそれこそ序ノ口から取り組みを見られるような時代になりましたが、脚光を浴びるのはやはりテレビ中継される十両や幕内になります。
それでも今回のような出来事を調べてみると、普段お目にかかることのない一番下のクラスではまた別の争いや、弱いけど相撲が好きなのでくじけずに頑張っている力士などを見ることができるわけです。
それこそ70㎏未満の明らかにヒョロヒョロな人間が、150㎏近い学生相撲出身者に弄ばれたりするのを唯一見ることができるのが序ノ口や序二段などになりますね。
こういった素人に近い体格の人間を三段目以下で無双している化け物じみた体格の力士たちが怪我や遅いデビューの影響でたまに下のクラスには存在しますが、そういった化け物が上に上がって何回挑んでもかなわないのが幕内力士であり三役であるわけです。
そう考えると横綱というのはとんでもない強さというのがよく分かりますね。
戦国時代や三国志などを題材とする小説では一騎当千という言葉がよく使われますが、僕はこういった強さのピラミッドを見ているとこういう表現はあながちフェイクではないと常々思ってしまうわけです。
こうしてみるとやっぱ相撲て格闘技だし、怖い世界だと思います。
うれしい二勝目!
この記事を書いてから迎えた平成三十年七月場所の三日目でうれしいニュースが飛び込んできました。
初日黒星の0勝1敗でこの場所二戦目となった服部桜ですが二子山部屋の颯雅(そうが)を破り通算二勝目をあげています。
気になって取り組み映像を探してみましたが、内容はちょっと拾い物のようですね(笑)。
この場所がデビュー場所の颯雅も思わず土俵上で笑ってしまっていますが、まだ埋まり切っていない観客席の全員が喜んでいるなど、良くも悪くも注目されていることが分かります。
勝負の世界なので勝つことが求められますが、へこたれずに頑張る姿を見ると応援したくなりますね。
個人的には三勝目も期待します。
→平成三十一年一月場所で峰崎部屋の峰雲(みねくも)から三勝目を挙げています。