今年のメジャーリーグ見どころは以前このブログでも取り上げてように、”(日本人的には)あまり見どころがない”とお伝えしてしていましたが、その中でも内容で数少ない話題を提供してくれていたテキサスレンジャースのダルビッシュ有が、トレード期限ぎりぎりの現地時間2017年7月31日にロサンゼルスドジャースにトレードされたことが発表されました。
ダルビッシュと言えば2012年に日本ハムファイターズからポスティングを経て6年契約総額6000万ドル(出来高400万ドル含む)でレンジャースに入団しましたが、今年が契約最終年であり、来シーズンはFA(フリー・エージェント)となり更なる年俸の高騰が予想されていただけに、チーム状況によってはトレードに出されることは各方面から予想はされていましたが、結果的にはナショナルリーグのドジャースのマイナー選手3名とのトレードが成立しました。
他にトレードが噂されたチームとしてニューヨークヤンキース(アメリカンリーグ東地区)やクリーブランドインディアンス(アメリカンリーグ中地区)が候補に挙がっていましたが、結果的には同一リーグへの放出を嫌ったのか、日本人のなじみの深いドジャースになりました。
いずれのチームも現在それぞれのディヴィジョンで1位のチームだったので、今回はまさしく優勝請負人としてのトレードとなります。(画像引用:MLB公式サイトより)
ダルビッシュのこれまでのMLB成績
年 | チーム | 防御率 | 試合数 | 完投 | 完封 | 勝利 | 敗戦 | セーブ | 投球回 | 被安打 | 被本塁打 | 奪三振 | 与四球 | 与死球 | 暴投 | ボーク | 失点 | 自責点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2017 | レンジャーズ | 4.01 | 22 | 0 | 0 | 6 | 9 | 0 | 137回 | 115 | 20 | 148 | 45 | 5 | 9 | 1 | 63 | 61 |
2016 | レンジャーズ | 3.41 | 17 | 0 | 0 | 7 | 5 | 0 | 100回 1/3 | 81 | 12 | 132 | 31 | 3 | 6 | 0 | 43 | 38 |
2014 | レンジャーズ | 3.06 | 22 | 2 | 1 | 10 | 7 | 0 | 144回 1/3 | 133 | 13 | 182 | 49 | 2 | 14 | 1 | 54 | 49 |
2013 | レンジャーズ | 2.83 | 32 | 0 | 0 | 13 | 9 | 0 | 209回 2/3 | 145 | 26 | 277 | 80 | 8 | 7 | 1 | 68 | 66 |
2012 | レンジャーズ | 3.90 | 29 | 0 | 0 | 16 | 9 | 0 | 191回 1/3 | 156 | 14 | 221 | 89 | 10 | 8 | 0 | 89 | 83 |
(スポーツナビより)
2014年のシーズン途中に肘のトミー・ジョン手術を受けているため2015年の登板は全くありませんでしたが、1年あたりの年俸が1000万ドルだったことを考えると、レンジャースとしては投資分は十分に回収できた数字と言えますね。
実際には入札額に約5100万ドルかかっているため投資額は約倍なのですが、超A級のピッチャーになれば1年あたり2000万ドルから2500万ドルは貰ってますので、2013年にサイヤング賞の有力候補(投票では2位)に挙がったことを考えると、それでも球団的には元は取れたと判断しているでしょう。
個人的な感想としては防御率が大体3点台前半、イニングイートもしてくれることを考えるとメジャーリーグの先発ピッチャーとしては一流に属する投手であることは間違いありません。
ただ細かい注文を出すとすると、成績以上に制球が悪いイメージがあり、それを自分で三振を取って後始末をしている印象で、MLB時代の松坂と少し似ています(若干上位互換ではあると思いますが)。
また、チームが安定して強くないということもありますが、勝率がそれほど高くありませんね。
素晴らしいピッチングを見せる時は圧巻の内容ですが、結局投げてみないとその日の状態が分からないというところが、まだまだ超一流の域に届いていないな気がします。
そのポテンシャルは十分だと思いますが、制球力の改善などこのあたりにまだ改善の余地はあるでしょう。
ロサンゼルスドジャースの現状
さて、ダルビッシュが移籍したドジャースですが、かつてはMLB移籍のパイオニアとなった野茂英雄が最初に在籍した球団として有名ですが、現在は元広島カープの前田健太投手も在籍しています。
その他にも主だったところでは石井一久投手や斎藤隆投手、黒田博樹投手などが在籍した球団として日本人にもなじみのあるチームですが、元々は国際色豊かなチームとして有名ですね。
ただ、このドジャースですが、日本人選手が在籍して優勝したという記憶がないように、ワールドシリーズの制覇は1988年まで遡らなければありませんし、それ以来ワールドシリーズにさえ進出していません。
この4年こそ元バスケットボールプレーヤーの超有名選手であるマジック・ジョンソンも属する投資家グループに球団が売却されたことにより、球団の資金面が潤い所属地区(ナショナルリーグ西地区)で4連覇しているわけですが、ワールドシリーズ制覇はドジャースにとっては約30年ぶりの悲願となります。
今年は2017年8月1日現在ドジャースは74勝31敗で2位のダイヤモンドバックスに14ゲーム差をつけてのブッチギリの1位のわけですが、それでも球団はダルビッシュの獲得にこだりました。
ポストシーズンを見据えたダルビッシュの獲得
MLBでは、この時期に下位に沈み優勝の目がなくなったチームは選手をトレードで放出し、逆に優勝が見えているチームは有力する選手を獲得するわけですが、その狙いはチーム力の底上げもありますが、やはり狙いはポストシーズン(レギュラーシーズン以後に行われるディヴィジョンシリーズやワールドシリーズ)となります。
現在ドジャースには先発陣がある程度揃っていると言われますが、主だったところを挙げてみると
- クレイトン・カーショウ・・・15勝2敗(防御率2.04)
- アレックス・ウッド・・・12勝1敗(防御率2.38)
- リッチ・ヒル・・・8勝4敗(防御率3.35)
- 柳賢振・・・3勝6敗1S(防御率3.83)
- ブランドン・マッカーシー6勝4敗(防御率3.84)
- 前田健太・・・9勝4敗1S(防御率4.09)
成績は2017年8月1日現在のものですが、現状先発5番手の前田健太でさえこの成績というのは実際のところスゴイ数字です。
実際は他の球団の5番手あたりとなると防御率5点とか下手すると6点なんてのは十分あり得る話なんですが、他球団から見ると羨ましくてしょうがない陣容と言えます。
ではなぜこの投手陣の中にさらにダルビッシュまで加えたかと簡単に解説しますと、ポストシーズンはご存知のように短期決戦になります。
日本でも最近日本シリーズだけでなくクライマックスシリーズがあるのでイメージしやすいかと思いますが、日本とアメリカのポストシーズンの内容では大きな違いがあります。
それはエース級の投手の圧倒的なピッチングです。
ドジャースで言えば黒田博樹のキャッチボール仲間として有名だったクレイトン・カーショウがエース格となるわけですが、アメリカのポストシーズンでエースが投げると本当に点が入りませんし、本当にヒットさえでなくなります。
それぐらいエース格が圧倒的ななわけですが、この超A級の投手のエグさで言えば、いくら日本の投手陣のレベルがアメリカ並みに高いと言ってもまだまだ及ばないでしょう。
それぐらいこのクラスの投手は化物並みの実力になります。
つまりポストシーズンにはいかに良質の投手を揃えておくかというよりもいかに化物級の投手を用意しておくかということが重要となってくるわけですが、おそらくドジャースの狙いはここになります。
確かにドジャースの先発陣はカーショウ以外も中々いいピッチャーが揃っていますが、ウッドにしてもヒルにしてもまだまだポッと出で感が拭い去れません。
前田健太に至っては勝ってはいるものの何とか点を取られながら5回や6回まで踏ん張っている状況で、1点取られたらほぼ終了となってしまうようなポストシーズンの舞台ではかなり使いにくくなります。
そこでいいピッチングをした時は圧倒的であるダルビッシュに白羽の矢が立てられたわけですがノーヒットノーラン未遂をやってしまうようなポテンシャルが十分に期待されての結果でしょう。
ドジャースのレギュラーシーズン1位はほぼ確実です。現在カーショウは離脱中ですが、おそらくポストシーズンはダルビッシュの二枚看板で確実にポストシーズンを戦い抜いていくための戦略なのだと思いますが、カーショウが本調子に戻らなかった時の保険的意味合いもあるでしょう。
以上のように今回のトレードはドジャースが1988年以来のワールドシリーズ制覇をするためのものですが、そのキーパーソンとしてダルビッシュが指名されたことは本人とってもかなり嬉しいことでしょう。
はたしてリーグチャンピオンシップ、ワールドシリーズなどでどういった登板を見せてくれるか今から楽しみでしょうがありません。
序盤は見どころの少なかったメジャーリーグですが、これでポストシーズンの楽しみがグッとあがりました。
マエケン君の出番が減りそうなのは間違いありませんが、ポストシーズン出番がなしなんてことがないように今から彼にも頑張ってアピールほしいところですね(笑)。