メジャーリーグ(NLB)では先月(7月末)のトレード期限を迎え、ダルビッシュ有という超大物投手がどこにトレードされるかということは注目の的でしたが、その裏でもヤンキースを始めとした有力球団などでも、ポストシーズンを迎えて実はたくさんのトレードが成立していました。(7月31日だけで11のトレードが成立しとり、7月後半で見ると約30)
その中には日本人で元ヤクルトスワローズでも活躍した青木宣親も含まれていたわけですが、日本ではあくまでダルビッシュのトレード話のオマケという程度の報道のされ方でしたね。
ということで、今回は青木選手がなぜトレードにいたったのか、あくまで個人的な推測ですが解説していきたいと思います。
青木宣親のMLBでのこれまでの成績
成績に関しては毎年同じような数字を残していますが、毎年春先は好調で3割2分あたりをキープして、夏場になると調子を落とし、また終盤に盛り返して2割8分あたりに落ち着くというのがもはや定番になっていますね。
年 | チーム | 打率 | 試合数 | 打数 | 得点 | 安打 | 二塁打 | 三塁打 | 本塁打 | 塁打数 | 打点 | 三振 | 四球 | 死球 | 犠打 | 犠飛 | 盗塁 | 出塁率 | 長打率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2017 | アストロズ | .272 | 71 | 202 | 28 | 55 | 12 | 1 | 2 | 75 | 19 | 29 | 15 | 2 | 1 | 4 | 5 | .323 | .371 |
2016 | マリナーズ | .283 | 118 | 417 | 63 | 118 | 24 | 4 | 4 | 162 | 28 | 45 | 34 | 9 | 5 | 1 | 7 | .349 | .388 |
2015 | ジャイアンツ | .287 | 93 | 355 | 42 | 102 | 12 | 3 | 5 | 135 | 26 | 25 | 30 | 6 | 1 | 0 | 14 | .353 | .380 |
2014 | ロイヤルズ | .285 | 132 | 491 | 63 | 140 | 22 | 6 | 1 | 177 | 43 | 49 | 43 | 6 | 8 | 1 | 17 | .349 | .360 |
2013 | ブリュワーズ | .286 | 155 | 597 | 80 | 171 | 20 | 3 | 8 | 221 | 37 | 40 | 55 | 11 | 8 | 3 | 20 | .356 | .370 |
2012 | ブリュワーズ | .288 | 151 | 520 | 81 | 150 | 37 | 4 | 10 | 225 | 50 | 55 | 43 | 13 | 7 | 5 | 30 | .355 | .433 |
選手としての特徴
打撃面から見ていくと、日本のプロ野球(NPB)では3割を超える打率を簡単に残していましたが、メジャーでは結果的に2割8分から9分であり三振は非常に少ない選手となります。
四球の数は平均的なものですが、ファールで粘る打撃スタイルのわりには思ったほどない印象を受けます。
長打力や走力に目を向けると、フルシーズン出場したと仮定すると本塁打は10本前後、盗塁は20程度は可能でしょうから、メジャーの中でもリードオフマンとしての仕事は十分果たせる選手ですね。
問題は守備面です。
ヤクルトやメジャー移籍当初は中堅で起用されることの多かった青木ですが、基本的にレフトの守備につくことが目立ちます。
もちろん他の選手との兼ね合いでライトやセンターにつくこともありますが、なぜレフトが多いのかというと、おそらくメジャーの外野手としては肩の弱さがネックなのでしょう。
日本では平均的な肩の選手でしたが、メジャーの選手たちは器用さには欠けるものの、身体能力に優れた選手が多いため、極端な弱肩ではないものの一塁から三塁への進塁の抑止力が必要なライトの守備には不安が残ります。
また守備範囲に関しては脚はそこそこ早いためメジャーでも平均的な印象を受けますが、個人的にはそれほど一歩目が早いタイプに見えず、飛球に対しても一直線に追えていない時も目につき、それをなんとかスピードで凌いでいるという印象を受けます。
球際の強さのなどの面でも目立つところがあるわけではないので、守備面に関しては最低限の仕事はできるものの、イチローのように守備で得点機会をもぎ取ったり抑止力のある選手とは言えません。
総合すると攻撃面ではパワーに関しては平均より劣るが、他は平均より少し上、守備面では肩は少し弱くこれといった見どころはないものの、平均的な守備は可能であり、外野ならどこでも守れるユーティリティなタイプの外野手ですね。
トレードの理由
今回のトレードはトロントブルージェイズのフランシスコ・リリアーノとヒューストンアストロズの青木宣親+テオスカー・ヘルナンデスとの1対2のトレードになりますが、リリアーノのほうが若干格上と見られたようなトレードになっていますね。
リリアーノはノーヒットノーランも達成したこのある先発投手ですが、不安定ながらもハマった時の凄さや三振がとれるところ、MLB通算11年で防御率が4.05などその実績からすると、わずかながら青木より少し上になります。
ちなみにリリアーノは青木より年は一つ下です。
青木と一緒にトレードされたヘルナンデスは昨年メジャーデビューしたばかりのドミニカ共和国出身で1992年生まれの若手選手ですが、青木と同じ外野手となります。
この選手については全く知りませんが、現況スタッツなどを見る限りまだまだマイナーとメジャーを行ったり来たりする選手ですが、マイナーでは実績を残しており、青木と同型の選手の有望選手のようです。
おそらく青木の年齢がある程度いっているため、走力や守備力が劣化した場合の保険的意味合いが強いのでしょう。
これはアストロズのチーム事情を見れば一目瞭然ですが、今まで弱小イメージの強かったアストロズですが、今シーズンは8月1日現在2位のマリナーズに10ゲーム以上の差をつけて独走中です。
その中でも注目は打撃力であり、打率や本塁打の数は両リーグ全体でも1位の数字を記録しており、圧倒的とさえ言えます。
逆に守備面で言うと、チーム防御率は4点台前半ながら所属するアメリカンリーグでは少しいいぐらいではありますが、ダラス・カイケルというしっかりとしたエースがいるものの、二番手三番手になると少し実績にも乏しく、不安な投手陣と言えます。
そのため少しでも実績のある先発投手が欲しかったところですが、好調な打撃陣を考えると選手として高齢な青木の放出は打ってつけだったわけです。
ブルージェイズのチーム状況
さて青木選手が移籍するトロントブルージェイズのチーム状況ですが、かつてはお笑い日本人助っ人”ムネ”こと川崎宗則選手の所属先として有名でしたが、現在アメリカンリーグの東地区で大きく離されてはいないものの5位、ワイルドカード争いでも5ゲーム程度の差なのでまだ完全に諦める状況ではないのですが、とにかく打撃が不振です。
チーム打率が.240前後とアメリカンリーグだけでも13位というお寒い状況で、パッとしない投手陣以上に打てる外野手が欲しかったのが本音でしょう。
この2年ほど好調なブルージェイズですが、チームの核として取ったトロウィツキーが思ったほど移籍以降成績を上げられておらず故障がちなことや、主砲ホセ・バティスタも今季打率2割台前半の大不振、他の外野陣もどちらかとおいうと青木より攻撃力では落ちるということでの獲得でしょう。
こうしてみると両チームともにメリットの大きなトレードであると思えます。
最後に、青木としてはワールドシリーズ制覇を狙えるチームから一転して最下位チームへの移籍となりますが、年を取ってトレードされるということは、裏を返せば計算できる選手だということだと思います。
腐るタイプの選手じゃないと思いますが、6チーム目のブルージェイズでも頑張ってほしいところですね。まずは規定打席に届くように目指してもらいたいところです。
あとブルージェイズであればミラクルで連勝する可能性もあるので、まだまだ目は離せませんね。