マンガ「ふたりの太星」感想:週刊少年ジャンプ2019年の新連載作品第六弾 

ふたりの太星

画力を圧倒的に向上させた福田健太郎先生が描く将棋マンガ

週刊少年ジャンプ第25号(2019年5月20日発売)からスタートした新連載作品「ふたりの太星(たいせい)」(作:福田健太郎)をとりあげてみたいと思います。

先週の第24号では全作品の「NARUTO」で世界的なヒットを飛ばした岸本斉史先生原作による「サムライ8 八丸伝」がかなり話題となりましたが、春の新連載シリーズ第二弾となるのが、今回の作品である「ふたりの太星」です。

作者の福田健太郎さんと言えばジャンプファンならピンとくる方もいるかもしれませんが、2014年に「デビリーマン」で本誌デビューしたマンガ家さんなのですが、約五年ぶりに週刊少年ジャンプへの帰還ということになります。

注目なのはデビュー作「デビリーマン」ではお世辞にもうまいと言えなかった絵が圧倒的に上手くなっている点です。

連載二作目となった「シニギワ」ですでに画力の改善に成功していた福田先生ですが、デビュー作ではそのストーリー性というよりも、画力が足を引っ張っていたのは明らかなだけに、その憂いがなくなった本作品ではどういったストーリーを読ませてくれるかに注目が集まります。

通常、取るに足らない新連載の作品であれば、僕も取り上げることもあまりないのですが、今回は中々目を引く作品だったので取り上げてみることにしました。

(画像引用:週刊少年ジャンプ公式サイト「ふたりの太星」より)

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「ふたりの太星」とは

週刊少年ジャンプ(集英社)の2019年第25号から連載が開始された作品となります。

作者はかつて同誌で「デビリーマン」という作品でデビューした福田健太郎先生となり、本作品は連載作品としては三作目となります。

原作者はクレジットされていませんが、将棋の監修は女流棋士の里見咲紀さんが行っているようです。

あらすじ

公式戦無敗。

天童太星(てんどうたいせい)は、最年少プロ棋士誕生間違いなしと言われるほどの将棋の実力の持ち主で、マスコミにも取り上げられるほど世間に知られた存在でした。

母の手一つで育てられたこともあり、一刻も早くプロ棋士を目指し将棋の研究に明け暮れる太星でしたが、そんな彼にも毎日駒を並べては意識する人物が一人だけいました。

同世代ではもはや敵なしと思われていた彼ですが、彼が唯一敵わないと思っていたのが”せーちゃん”と呼ぶ少年でした。

しかし太星はある秘密により、その”せい”と直接対局することはありません。

その秘密を知るのはとなりに進む同い年の幼馴染の少女春川奏でと太星だけだったのですが・・・

といった感じのお話です。

物語の主題の部分に関して、もう少しネタバレしたほうが話は分かりやすかったのですが、一応第一話のキーになるポイントなので、未読の方のために肝心の秘密はここでは伏せておきます。

週刊少年ジャンプにとって鬼門となる”将棋マンガ”

さてここからは感想に入りたいと思いますが、まず何と言っても注目は週刊少年ジャンプの”将棋マンガ”という点ですね。

とにかく週刊少年ジャンプは将棋マンガで成功した記憶がないというか、こういった盤上ゲームのジャンルでは囲碁を題材とした「ヒカルの碁」ぐらいしか、思い浮かびません。

近年の作品としては「ものの歩」や「紅葉の棋節」といった将棋マンガが連載されていましたが、あっという間に連載順は後ろのほうになっていつの間にか消えてましたよね。

週刊少年ジャンプがとにかく取り扱うのが下手なジャンルです。

本来この将棋というジャンルは男性ならほとんどの方がルールを知っているでしょうし、取っつきやすいジャンルのはずなんですが、それを証明するように他の雑誌に目をやると、「3月のライオン」(ヤングアニマル:白泉社)、「ハチワンダイバー」(ヤングジャンプ:集英社)、「月下の棋士」、「リボーンの棋士」(ビッグコミックスピリッツ:小学館)など過去に人気となったり、現在も連載されている作品もいくつかあり決して連載を続けるのは難しいジャンルではないはずです。

このあたり色々な原因はあるのでしょうが、個人的には編集部の我慢が足らないという面もあると思いますし、将棋を描き切れていないとうのが根本的な原因にあるように感じます。

結局のところ主人公が将棋を指してはいるものの、その中身が薄っぺらいというか、”別のジャンル、スポーツに置き換えても成立しそう”な内容なので、その勝負に読者が入り込めず結果に重きが置かれているんですよね。ようするに過程が弱いと思います。

かつて「ヒカルの碁」が大ヒットした理由はまさにこの部分がしっかりと描かれていたせいだとは思うんですよ。

しっかり対局の中身を描くことにより、囲碁のことは詳しくは分からないけど、でも囲碁をしているような気分になり、その結果囲碁のことを知りたくなるような内容になっていましたよね。

その過程の中で主人公やその他の登場人物が成長したり葛藤をうまく描かれていたところが絶妙だったと思います。

結局他の雑誌の将棋マンガが成功しているのも、しっかりと将棋を描き切った上で登場人物を動かしているので説得力があるんでしょう。

週刊少年ジャンプの将棋マンガがヒットしない理由はやはりジャンルありきでの連載というのが根本的な失敗の理由でしょう。

今回はじまった「ふたりの太星」はまだ実際にガッツリと対局が描かれているわけではありませんでしたが、この部分をおろそかにするとやはり同じ失敗を繰り返しそうな気がしますね。

はたして今後どうやって話を膨らましていくのか?

今回第一話を読んだ感じ、新連載としては非常に優秀な内容だったと思います。

昨年なんかは週刊少年ジャンプ創刊五十周年記念の連続新連載と銘打っていくつかの連載を始めましたが、大半が初回で”打ち切りかな?”というのが見えてくる作品で案の定ほとんどが打ち切られました。

そういうのに比べると先週の「サムライ8 八丸伝」と今回の「ふたりの太星」なんかは段違いに話がよくできていましたし、”次も読んで見ようかな”といったレベルにあったと思います。

絵は非常に上手い作者(デビュー作はビックリするぐらい酷かったんですが、ビックリするぐらい上手くなっています)であり特に変なクセもないので、そこに神経が行くことがなく、しっかりとストーリーを読ませるような中身になっているのは好感がもてました。

逆にそれが”週刊少年ジャンプらしくないな”と思ったんですが、今の連載陣がどれだけ酷いのかということにはなりますよね。

”今回は二週続けてちゃんとしたのが出てきた!”こう思った読者の人も多いのではないのでしょうか。

ただ・・・

第一話としては非常に良かったと思います。導入としては十分な内容ではあったんですが、物語のキーとなる二人の主人公をどう将棋に活かして行くのかが若干見えないんですよね。

この作品のプロットの肝心な部分は”せい”と”たい”という二人の人物をどうクロスさせていくかではあるんですが、そもそもこの二人の設定そのものの説明がすっ飛ばされていますし、動機付けとしてはあいまいなままスタートしているのは今後の借金になるような感じがします。

はたしてここの部分をどうやって回収するのか説得力のある説明ができるような設定でもないためここは不安ですし、まだ「ヒカルの碁」の幽霊という設定のほうが納得はできました。

あと不安な点としては主人公の二人がどうしてもキーとなるために前述したような将棋がおろそかになりそうな点です。

最終的な着地点としては二人が対局するというのがテーマなんでしょうが、そうなるとどうしてもヒットマンガに必ずいるライバルというのが作りにくくなりますし、結局のところ作品の設定を活かして目の前の相手を倒していくというのがメインになっていきそうな気がしてなりません。

まだ第一話を見た段階ではなんとも言えないところですが、これまでの新連載作品の中では一話単体であれば非常にレベルの高い内容だっただけに、しっかりと将棋を描いて将棋ブームの後押しをしてもらいたいと思います。

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