「龍狼伝」はどこまで迷走するのか?:愛するが故に言わせてもらう終了すべきマンガ(4)

龍狼伝

月刊少年マガジン黄金期を支えた作品

今回取り上げる「龍狼伝(りゅうろうでん)」は1993年に月刊少年マガジン(講談社:以下月刊マガジン)で連載がスタートした作品であり、当時の月刊マンガ雑誌の中では圧倒的人気を誇った月刊マガジンの黄金期を支えた作品のひとつでした。

週刊誌に比べると2倍近いページ数を活かして、余裕を持ったストーリー展開や大胆なコマ割りができることにより、作品に幅を持たせられるのが月刊誌に連載されることのメリットですが、当時の月刊マガジンは「修羅の門」や「鉄拳チンミ」や「DEARBOYS」、「風光る」などの連載陣がそれぞれ人気のピークの状態であり、まさしく捨てる(読み飛ばす)部分のない完璧な状態と言えました。

「龍狼伝」はその中でも後発でありながら男子には鉄板ネタの「三国志」と今では人気作品を作るテンプレートの「異世界転生モノ」を組み合せた作品であり、当然のごとく大ヒットとなりました。

そんな人気作品だった「龍狼伝」なのですが、今はとんでもない状態になっていることをご存知でしょうか。

(画像引用:講談社コミックプラス「龍狼伝 王覇立国編」より)

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「龍狼伝」とは

山原義人(やまはらよしと)先生により1993年から月刊少年マガジンで連載されている作品で、途中で作者の病気(脳出血という情報も)で休載を挟みながら、現在まで累計60巻近くのコミックスが刊行されています。

現在は「龍狼伝」、「龍狼伝 中原繚乱編」に続いて第三部にあたる状態で、「龍狼伝 王覇立国編」というタイトルで連載が行われています。

あらすじ

スタートがかなり前なので記憶をたどりながら書きますと・・・

主人公の天地志狼(あまち しろう)と真澄(ますみ)は幼馴染であり普通の生活をおくる高校生でしたが、ある日突然現れた龍に飲み込まれ、見たことない世界で目を覚まします。

そこで出会ったのが中国語を話す少女蓮花(レンファ)と彼女が兄と慕う単福だったのですが、志狼は母親が中国人であったためすぐにそこが日本でなく中国であることに気づきます。

彼らと行動をともにする志狼と真澄でしたが、その先で出会った屈強な男たちに出会い志狼は驚愕します。

彼らの名前は劉備玄徳、関羽雲長、張飛益徳といい、志狼たちは自分たちが三国志の時代になぜかタイムスリップしてしまったことに気づきます。

という感じで話が進みます。(もしかしたら若干間違っているかもしれません(笑)が世界観だけご理解ください)

感想(多少ネタバレ有り)

「三国志」+「異世界転生モノ」で当然大ヒット

さて、ここからは「龍狼伝」の個人的な感想を書いていきたいと思いますが、まず、改めて調べなおしてみるとビックリ、連載開始はもう25年前になるんですね。

そこそこ前とは感じていましたが、まさかこんなに前だとは思いませんでしたが、そう考えると、僕たちおっさん世代と10代、20代の子たちとはこのマンガに対する印象やとらえ方はは違うのかもしれませんね。

おそらくこのマンガの絶頂期を知っているのは30代から40代の男性がメインなのでしょうが、僕を含めたこの世代にとって共通の娯楽と言えば、スマホなんかは当然ない時代なので、マンガとともにやはりテレビゲームが主役でした。

その中でも鉄板だったのがKOEI(旧光栄)の「三国志」や「信長の野望」などのシミュレーションゲームだったのですが、たまにインドアで遊ぶときなんかは友達同士3、4人で集まって「三国志」をひたすらしていた方も多いでしょう。

「三国志」などのシミュレーションゲームの良かったところは、多数でも同時に遊べるし一人でも遊べるという点や、一回クリアしても国を変えてまたトライできるということで、いつまででも遊べるゲームで男子のハートを鷲掴みにしていました(ただ、その分ソフトはべらぼーに高かったですけど・・・)。

また10代の頃は勉強しろと言われて満足にプレイする時間がなかったので、その反動で大人になって独り暮らしを始めてから思う存分やりこんだ方も多いでしょう。

そういったバックボーンが僕らの世代にはあるので、三国志に対する知識はおそらく、そこらへんの歴史好きの爺さんならはるかにしのぐものがあるでしょうが、そんな読者がたくさんいる時代に現れたのが「龍狼伝」だったわけです。

当時、三国志を題材としたマンガは意外と少なく、それこそ男の子たちの愛読書横山光輝(よこやまみつてる)版三国志が聖書のような存在としてある以外は、本宮ひろし先生の「天地を喰らう」しかなかったような記憶があります。

よって待望の本格三国志マンガ「龍狼伝」が登場したわけですが、このマンガのもう一つのポイントは、今でこそラノベで手軽な題材として使われている”異世界転生モノ”だった点です。

当時も”異世界転生モノ”は全くなかったわけではありませんが、三国志の歴史を知っている若者が実際にその世界に登場するとどうなるか、当時の若者にはまさにワクワクドキドキの設定だったわけで、当然の大ヒットとなったわけです。

最初は本当に面白かったですね。最初は・・・。

架空の人物が登場し始めて雲行きが怪しくなる

この「龍狼伝」、少しだけストーリーを追うと、主人公の志狼たちは最初劉備陣営に加わります。

そこで劉備や関羽、張飛といった三国志(演義)の主人公たちが登場してくるわけですが、当然敵は曹操など魏の武将たちが登場してきて、争いに巻き込まれます。

その出来事などに対して、ほぼ歴史の知識しかない主人公が、実際に起こった歴史を思い出しつつ才覚を発揮して大活躍していくというのが痛快だったんですよね。

また自分がよく知っている武将が史実にある程度沿いながらも、ある時は駒となり、ある時は主人公の想像を超える圧倒的な力などを発揮して活躍する様も、三国志好きにはたまらない展開でした。

しかしながら主人公の敵が曹操など魏全体からその参謀役である司馬懿仲達に代わり始めたあたりから、ストーリーが傾き始めます。

この「龍狼伝」では漢の皇帝を擁(いだ)きつつもあくまで臣下として振る舞う曹操に対して、仲達がその野心を隠さず皇帝にすら取って代わろうとするわけですが、こうなると史実とは若干変わってくるので、オリジナルのキャラクターが登場し始めます。

仲達の手足となって動くのが五虎神と呼ばれる手練れ達なのですが、序盤は武将たちの単純な武や知略で戦いが行われていたものの、彼らは妖術というか怪しい技を使い始めます(実際には死人もいた)。

そうなると主人公もパワーアップしないと倒せなくなり、ついには仙人が出てきて力を授けます。

もうこのあたりでアレレ?と思う方もいるでしょうが、まだこの時点では三国志の体裁は取れていたんですよね。

主人公も現代の高校生=ヒョロガキのままで生き残るにはリアリティがないわけで、関羽や張飛に鍛えてもらってたりするのですが、仙人に鍛えられるのもまだこの時は違和感はそれほどなかった感じはします。

この五虎神が登場し始めたころはですね、表立った戦いは史実通りに武将が戦いつつ、局地戦や裏の戦いとも呼べる場面で主人公と敵の、人の力を超えた戦いが起こっていたという描き方だったので、あくまでエクストララウンドという位置づけでした。

関羽や張飛、夏侯惇や曹仁、甘寧なんかもしっかり出てきて活躍していましたね。

しかしながらそれが段々とエスカレートしてきます。

中盤ごろは三国志半分異世界フィクション半分ぐらいのはずだったんですが、第二部「龍狼伝 中原繚乱編」あたりになるともはや人外の戦いメインになってきます。

主人公の志狼は劉備のもとを離れ、仲達を倒すために曹操の元に行く(表立ってくだったわけではない)のですが、ここからは蜀の武将たちはほぼフェイドアウト状態、孔明も序盤はいたのですが、ほぼ活躍しないままどっかにいきます(笑)。

なんてたって主人公が最強の武将であり軍師なので活躍しようがないのですが、第二部からは主人公+虎豹騎(実在の魏の親衛隊)対仲達+その部下になってくるので、史実の出来事にはほぼ触れなくなってしまいます。

たしか武将も曹仁なんかがたまにちょろっと出てくるぐらいでしたよね。

仲達の部下も段々と強力なやつが出てきて彼らも仙人の技を使うのですが、そなると主人公もさらなる仙人パワーが必要になってくるのですが、もうこうなると、ドラゴンボールでカリン様の修行を終えた悟空が、次は神様に修行をつけてもらうような形になってしまうわけです。

そうです、この「龍狼伝」はもはや三国志の世界からかけ離れた仙人バトルマンガへと進化を遂げていったのです。

ついには宗教バトルへ発展?

すでに三国志の実在の登場人物がモブ的存在になってきている「龍狼伝」なのですが、最新の展開ではさらに進化を遂げます。

基本線として主人公は仲達の野望阻止のために行動しているのですが、ついには新たなる勢力が登場します。

それが神の聖杯(エリクシール)と呼ばれる集団なのですが、なんと彼らは中国人ではありません。他の神を擁く集団なのでおそらく白人という設定なのですが、なんと”スーパーサイヤ人ゴッド”状態である志狼の仙人の技を使っても苦戦します。

仲達の部下を様々な力を身に着けながらしのいできた主人公なのですが、あらたなる強敵にどうする志狼?というのが最新の展開なのです。

「龍狼伝」のこれから

感想というよりも、大まかな流れを書いてしまいましたが、

「三国志」どこいった?

結局これが言いたかっただけ(笑)なんですよね。

いつもなら作品対して、ここはああしたほうが良かったとか、ちょっと横道にそれ過ぎなので戻したほうがいいと思うし、修正もききそうな気がするものの、「龍狼伝」はもはやぶっ飛び過ぎて後戻りできない状態だと思います。

”if三国志”の面白さは三国志がベースにあってこそ成り立つわけで、そのエッセンスが現在どこにもないこの作品に見るべき部分があるとは思いません。

序盤は本当に面白かったんですが、どうしてこうなったんでしょうか?晩節を濁さないためにも早く連載終了すべきマンガの筆頭に挙げたい作品です。


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