あの人気シリーズ「島耕作」の最終章?
例えば人に好きなマンガを20個挙げろと言われた時に、みなさんは何を挙げますか?
先日も週刊少年ジャンプに関する記事の時に書きましたが、マンガ歴約30年、今でも欠かさず人気漫画や雑誌をチェックしている(奥さんの影響で少女マンガも若干把握はしています)僕ですが、20個挙げろと言われればまず間違いなく「島耕作」シリーズを挙げます。
個人的な評価としては同じ作者の弘兼憲史(ひろかねけんし)先生の「加治隆介の議」(かじりゅうすけのぎ)と双璧なぐらいお気に入りな作品なんですが、今回はこの「島耕作」シリーズのうち現在連載中の一つである「会長島耕作」について取り上げたいと思います。(上記ならびにサムネイル画像は講談社:モーニング公式ページより引用)
「会長島耕作とは」
2013年から週刊モーニング(講談社)で連載中の作品で、1983年~1992年まで同誌で連載された「課長島耕作」の流れを引き継ぐ正統後継作品。作者はいずれも弘兼憲史先生になります。
あらすじ
前作で初芝電器と五洋電気が合併された会社の初代社長となった島耕作は、シンククローバルを掲げ地球規模で環境問題も考えた企業を目指し会社の名前を「TECOT(テコット)」に変更します。
しかしながら二期連続の赤字を出したことによりその責任をとり、会長の万亀とともに退任し、後任には中国時代の腹心国分を指名します。
経営の最前線から退いた耕作は会長に就任し、これまでの会社経営から一段上がった経済界や政界とのストーリーが展開します。
シリーズの面白さがまったくない
さて、「島耕作」シリーズと言われれば、「課長島耕作」から始まり、その後正統後継作として「部長島耕作」や「取締役島耕作」などが連載されてきました。
その後「社長島耕作」を経て、現在週刊モーニングに連載中の「会長島耕作」というわけですが、最近はこの正規のシリーズの他にイブニングなどで「ヤング島耕作」や「学生島耕作」などスピンオフ的なものまで連載されていましたね。
島耕作シリーズ一覧
- 課長島耕作(1983年~1992年:以下モーニングで連載)
- 部長島耕作(1992年~2002年)
- 取締役島耕作(2002年~2005年)
- 常務島耕作(2005年~2006年)
- 専務島耕作(2006年~2008年)
- 社長島耕作(2008年~2013年)
- 会長島耕作(2013年~)
- ヤング島耕作(2001年~2010年※途中からヤング島耕作主任編に:以下イブニングで連載)
- 係長島耕作(2010年~2013年)
- 学生島耕作(2014年~※現在学生島耕作就活編)
- JK大町久美子(2017年:単発のスピンオフ作品:モーニングに掲載)
読んだことある方ならご存知でしょうが、「島耕作」シリーズと言えば、派閥を好まず自分の信念に基づいて行動するモテ男「島耕作」のビジネスの世界での活躍や恋愛を描いてきましたが、その魅力は「課長島耕作」に始まり「部長島耕作」でも十分に堪能することができました。
「ヤング島耕作」あたりに関しては出世や競争というエッセンスが上記作品に比べると若干もの足りなさがありますが、このあたりの作品にはマンガ内での伝説の経営者であり初芝創業者の吉原初太郎も出てきたりするので、元々の「島耕作」ファンには十分楽しめる作品でしょう。
しかしながら現在の「会長島耕作」面白いと思いますか?
ハッキリ言っちゃうと全く面白くないと思うのは僕だけでしょうが?
ただのビジネスマンガになっている
もはや浮世離れし過ぎて共感できない
元々島耕作と言えば松下電器がモデルと言われる「初芝電機」の社員として広告畑で入社し、ハツシバアメリカに渡ってからは現在のパートナーの大町久美子と映画会社の買収に成功したり、その後部長となってからはワイン業界でも活躍したり、アメリカ時代の元恋人の娘(実の娘)ニャッコ(だったかな?)を音楽事務所で売り出して大ヒットを飛ばしたりと、恋愛や家族ドラマを描きつつもうまく世相とリンクさせながらも、色々な業界の内部事情や出世争いも絡めて、そのバランスは秀逸でした。
おそらく世間の男性ファン(おそらく男性ファンがほとんどでしょう)の心をつかんだのはこの辺りでしょう。同じビジネスマンとして憧れる男性像をうまく表現していた歴史に残るマンガであったことは間違いないと思います。
しかしながら現在の「会長島耕作」はどうでしょう。
出世してしまい、かつて平社員時代のような活躍を描くのは難しいことは理解できますが、全編堅苦しい業界や政界の裏話的なものがほとんどで、内容が一般市民の世界とは離れすぎているような気がします。
つまりは理想のサラリーマン像としてかつて読者の分身であった島耕作がどこか雲の上の存在になっているような気がするんです。
また島耕作と言えば、
- 仕事でどこかへ行く
- そこで偶然誰か(ほぼ女性)と出会い気に入られる
- 仕事上のライバルが現れ危機一髪
- 2の人間が実はスゴイ人間で島耕作の助けとなりライバルを倒す
- 出世
この王道パターンが出来上がっていて、一種の水戸黄門的なテンプレートのストーリーがよかったのですが、今はこのパターンさえも少なくなってきました。
定番の出世や色恋といった要素がない
実際はこういったシリーズ定番のエピソードもありはしますが、今までの島耕作というよりも昔の「ハロー張りネズミ」のような、エピソードが終わればその流れるが切れる読み切り型のストーリーに内容が変化していますし、たまにほとんどが経済界の話で終わる退屈なパターンもありますね。
この理由として、登場人物がもはや普通のサラリーマンでは会わないような偉い人ばかりであったり、今までのキャストが年を取り過ぎたというのあるでしょうが、現在のマンガ「会長島耕作」には主人公島耕作を上回る魅力を発揮した、彼もあこがれの中沢部長(のちに社長になりましたが)のような爽快感のある人物がほとんど登場してきません。
どうしても島耕作を中心に描かないといけないのは理解はできますが、今までの島耕作の良さが現在の「会長島耕作」では完全に欠如していると思います。
ビジネスの世界をより濃厚に描きたいとというのは分かりますが、このマンガの最大の魅力であった等身大の人間模様を描く、というテーマがないのなら晩節を汚さないためにもこのマンガを早く終わらせてほしいのが、ファンとしての僕の意見となります。
やっぱり自分の信念を貫きながら出世していくいい男を見たいんですよね。
リアルなビジネスマンガを描くなら後継者を育てることをテーマにすべき
ではどうやってこのマンガを着地させるのがベストか考えた場合、個人的には大好きなマンガなので、やはり「島耕作」自分と同じような派閥に所属しない正義感の男を陰ながら応援し出世させる、これがベストであり正統派「島耕作」シリーズの締めくくりにふさわしいと思いますね。
かつて「課長島耕作」の最後では中沢さんが社長になった時には、ごぼう抜きや島耕作への根回しなどでワクワク感もあり非常に面白いストーリー展開でしたが、最後の酒場の場面などは思わず涙物のすばらしいシーンでした。
マンガ内で描かれる歴代の会長たちの最後はいずれも亡くなるという展開で、出世競争が活性化しストーリーも広がりをみせましたが、島耕作だけはこういう最後はやめてもらいたいですね。
ホント大好きだからこそ言わせてもらいますが、今のままの話がつづくようであれば早く終わって欲しいと思います。
ほんとこのままの勢いだと「被介護人 島耕作」とかなりそうで、勘弁してもらいたいものです。やっぱり「課長 島耕作」の終わり方がキレイでよかったですよね。
コメント
昭和62年の夏にはまだアメリカ駐在だった主人公が描かれていましたがその頃にモーニング編集部に一通のエアメールが届いています。
差出人はBF HOMES PARNAQUE というフィリピンの住宅街に当時住んでいた読者でした。
手紙の内容は課長島耕作を読む為にOCSという書籍輸出入業者を通じて高額な価格で毎週モーニングを輸入購読している熱烈なファンだという自己紹介と、アメリカの次の赴任先を是非フィリピンにという要望だったそうです。
本人がその手紙を作成している横には当時海産物輸入の商談の為に来比していた私が居ました。
長文の手紙にはフィリピン政財界の興味深い実話などが織り込まれていたと記憶しています。
課長島耕作のフィリピン編は面白かったんですが、最近は少し政財界よりの話で退屈です。
私はまだ途中ですが会長編楽しんでます。
会長はどんな立場でどんな仕事をしているのかや、経団連などの存在意義、財界と政治の関わりなどがよくわかりました。あとは今後の成長産業である農業の可能性をしっかりと描いているので、家電メーカー、車メーカーがひょっとしたら農産物メーカーとして変身する未来を想像してワクワクしました。
まあ、企業人として、人の一生としてはもう上がりなので、静かに見守りたいですね。
僕は元々島耕作シリーズの好きだったところは、テンポの良さやカッコよさだっただけに、会長編の内容に理解はできるものの残念ではあります。
やっぱり部長島耕作あたりの絶頂期の面白さがあるだけに微妙な気分で読んでいます。