週刊少年チャンピオンから初の大賞受賞
マンガの世界でも賞レースが数多く存在するものではありますが、その中には各出版社の自社作品の発掘や掲揚が目的のものから、官公庁が主体となった”文化庁メディア芸術祭賞”のようなマンガを芸術作品のひとつとして評価する賞(個人的にはこの賞は海外向けのアピールのように感じますが・・・)など存在します。手塚賞や赤塚賞も昔から有名ですね。
これらが出版社やお上(おかみ)主導での選考レースであるのに対して、あくまで読者ベースとして存在するのが、このブログでも以前取り上げた「このマンガすごい!」や「マンガ大賞」(「このマンガがすごい!」と「マンガ大賞」について調べてみた)なのですが、2018年の「マンガ大賞」の大賞作品が「BEASTARS」(週刊少年チャンピオン)に決定したので取り上げてみたいと思います。
(サムネイル画像引用:「BEASTARS」特設サイト:株式会社秋田書店より)
Contents
「BEASTARS」とは
「BEASTARS」(ビースターズ)とは2016年から週刊少年チャンピオン(秋田書店)で連載されている板垣巴留(いたがき ぱる)さんよるマンガ作品となります。
2017年3月現在コミックスが7巻まで発売されており、現在も連載中です。
あらすじ
僕もガッツリ読んでいるわけではないので少しイメージ的なあらすじにはなりますが、簡単に説明すると
舞台は中高一貫教育のエリート学校「チェリートン学園」の演劇部が舞台となりますが、この作品の少し変わったところは、すべての登場人物が動物ということで擬人化されているという点です。
ある日演劇部の学生の一人アルパカのテムが何者かに食い殺されるという事件が起こりますが、同じ部員で肉食獣ハイイロオオカミであり寡黙な性格の主人公レゴシは、部内からも疑われてしまいます。
結局この疑いは晴れますが、この事件を境に肉食獣と草食獣たちに溝のようなものができていく中、この演劇部を舞台とした肉食獣と草食獣とのそれぞれの種族ごと考え方ややりとり、主人公レゴシの内なる本能”草食獣を捕食したい”を感じながらもウサギのハルに恋心をいただくなど、学園生活と動物の生態のようなものがミックスされた作品となります。
作者は「刃牙」の板垣恵介先生の娘?
作者の板垣巴留さんですが実は同じ週刊少年チャンピオンで連載中の「刃牙」シリーズの作者である板垣恵介先生の娘という噂があります。
巴留先生に関しては1993年生まれでスタイルのいい女性ということぐらいしか分かっていないのですが、恵介先生が1957年生まれで3人の娘がいるそうなので、年齢やプロフィールなどを考えるとあながちこの噂も本当のような気がしますね。
現に連載開始から二年間経ってもチャンピオン自体や本人がこの噂を否定したという情報もないのでガチなのかもしれません。
ただ、個人的にはマンガが面白ければいいので、コネや縁故採用みたいなものを使って連載を開始しようがどうでもいい話題に感じます。
「マンガ大賞」大賞受賞に関して
さて、ここからは作品そのものや今年の「マンガ大賞」のそれぞれのノミネート作品について書いていきたいと思いますが、「BEASTARS」の大賞受賞に関して言うと、正直なところ
他にもっと面白い作品あったんでない?
といった印象を受けます。
後にこの作品の感想も書きますが、つまらない作品ではないと思いますし、中身に関してはいい作品だと思います。
ただ、この「マンガ大賞」の”8巻以下しか刊行されていない作品の中で他の人に薦めたい作品”という趣旨から考えると、個人的にはまず率先して選ぼうとは思いませんし、どちらかと言えば、この作品も新人賞を受賞した”文化庁メディア芸術祭賞”のほうがしっくりくる内容です。
そこで今回は他にどんな作品がノミネートされていたのか調べてみたわけですが、正直なところ全体的には小粒な印象を受けるのは気のせいでしょうか。
2015年の第8回(大賞は東村アキコさんの「かくかくしかじか」)あたりから何となく方向性が変わってきている印象を受けます。
昔は「このマンガがすごい!」も含めて、知らずに読んでみると”へぇ こんな面白いマンガがあったのか”と思ったもんですが、今は場合によって”こんなのを薦めるなよ!”と感じる作品も多くなってきましたね。(もちろん意外な発見もあります)
第11回「マンガ大賞」2018 他のノミネート作品と獲得ポイント
我らコンタクティ(森田るい) 68P
凪のお暇(コナリミサト) 56P
ダンジョン飯(九井諒子) 52P
不滅のあなたへ(大今良時) 47P
ランウェイで笑って(猪ノ谷言葉) 46P
とんがり帽子のアトリエ(白浜鴎) 42P
メイドインアビス(つくしあきひと) 40P
映像研には手を出すな!(大童澄瞳) 38P
映画大好きポンポさん(杉谷庄吾【人間プラモ】) 28P
約束のネバーランド(白井カイウ・出水ぽすか) 26P
ゴールデンゴールド(堀尾省太)13P
「BEASTARS」を読んだ感想
手塚治虫作品ぽい
この作品についての感想を書いていきたいと思いますが、上のほうに書いたようにつまらなくはないと思いますし、いい作品ではあると思います。
ただ、マンガ的な面白さや次が気になってどんどん読んでいきたいかと言われると、そういうマンガではないんですよね。
最初に読んで思ったのはやっぱりちょっと高尚すぎるんですよね。
端的に言うと学園モノと動物を擬人化させてそれをミックスさせたアイデアや設定は秀逸で読みごたえはあるんですが、どこか大人向けの絵本を読んでいるような気にさせられます。
ちょうど手塚治虫先生の「火の鳥」なんかの後味に近いものを感じさせられるので、読んだ後の”なるほどなぁ・・・”という感覚はあっても”ちょ、超おもしれえええええぇーーーー!!”という感じではないんですよね。
僕がお子ちゃまというのもあるかもしれませんが、手塚マンガで言えば「鉄腕アトム」のプルート編みたいなものがやっぱり「マンガ大賞」向きの作品であり、誰にでも薦めたい作品なんですよね。
「火の鳥」みたいなのなんかは、ひっそりと一人で読む大人向けのマンガだと思うんです。
いや、いい作品ですよ(笑)
最後に自分なりにフォローしておきますと、この作品については”アカン”とは思っていません。
人に薦めたいかと言われるとそうではないと言っているだけで、いい作品であることは強調しておきます。
それこそ週刊少年チャンピオンでやっていること自体が謎なレベルであり、雰囲気的にはモーニングなんかでやっているようなマンガという感じはしますね。