「ビーストチルドレン」ジャンプのラグビーマンガは何が足らないのか?(感想)

ビーストチルドレン

ワールドカップとの相乗効果を狙うも、漂う打ち切り臭

現在ラグビーのワールドカップ日本代表の活躍によりワイドショーをはじめとしとして、全国民とはいいませんが、部分的ではあるものの盛り上がりを見せています。

前回大会も一時的にもの凄い盛り上がったものの、気づけばラグビー熱もどこかへ行ってしまっていたので、今回はいいきっかけになって欲しいところです。

さて、ラグビーと言えば週刊少年ジャンプでも連載中のラグビーマンガがあります。

ビーストチルドレン」(作:寺坂研人)という作品です。

おそらく今回の地元開催のワールドカップに合わせて連載を始めた作品なんでしょうが、ハッキリ言ってやばいです。

終わりそうです。

週刊少年ジャンプと言えば、特に読者アンケートの結果が掲載順に現れやすいと言われている雑誌ですが、2019年の5月(週刊少年ジャンプ第26号)から「ビーストチルドレン」はスタートしたものの、掲載順位は順調に下がり始めついには雑誌の最後にまで順位を下げる週まで現れました。

長年のジャンプファンなら”打ち切り待ったなし!”と感じるところですが、ご存知のように現在はラグビーワールドカップ日本大会の真っ最中で、ラグビー熱も日本国内では高まりつつあります。

さすがに編集部としてもワールドカップの結果次第では巻き返しもあるかもしれないということで、今は様子を見ている状況でしょうが、現実的には掲載場所を考えても現時点での打ち切り候補の筆頭格とも言えるでしょう。

状況は非常に厳しいと言えます。

僕も連載開始当初から”長くは続かないだろうな”と感じてはいた作品なんですが、ただ作品の内容に関しては

そこそこ読める作品

とは思うんですよね。

今回はこの「ビーストチルドレン」、ジャンプ歴約35年の僕が一体何がダメなのか考えてみたいと思います。

(画像引用:週刊少年ジャンプ公式サイト「ビーストチルドレン」より)

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「ビーストチルドレン」とは

2019年5月27日発売の週刊少年ジャンプ(集英社)第26号から連載中の寺坂研人(てらさかけんと)先生原作によるマンガ作品です。

あまり成功例のないラグビーを扱った王道系のスポーツ作品となります。

あらすじ

かつてラグビーの日本代表には一樹雄虎(いつきおのとら)というスター選手がいました。

幼少期に彼のプレーを間近で見ていた主人公の獅子ヶ谷桜(ししがやさくら)は、中学生になった今でも彼やラグビーの魅力に取りつかれていました。

しかしながらマイナースポーツであるラグビー、まわりにラグビーをしている人間は皆無でたった一人のラグビー部員でした。

そんなある日いつものように桜が一人で練習をしていると、ラグビーを知る人物が彼の前に現れます。

雪兎(ゆきと)と名乗る少年に興味をもつ桜でしたが、実は彼は同じ中学校の生徒でした。

桜は雪兎をラグビーに誘いますが、彼は頑なにそれを拒み、さらに自分の尊敬する一樹雄虎を馬鹿にする発言をします。

自分の愚かさを思い知らせるために雪兎は桜にラグビーを模した鬼ごっこを提案しますが、圧倒的な才能の前に桜は全く成すすべがありませんでした。

しかし極限まで集中した桜は最終的に雪兎を捕まえることに成功したのですが、雪兎は彼のその姿に自分の父親の姿を重ねるのでした。

雪兎は一樹雄虎の息子だったのです。

・・・といったお話です。

作者:寺坂研人

人気バスケットボールマンガ「黒子のバスケ」の作者である藤巻忠俊先生の元アシスタントということで、今回のビーストチルドレンが初の週刊連載作品となるようです。

どちらかと言うと面白いが・・・

ここからはこの「ビーストチルドレン」の感想というか、改善点、ここはこうしたほうが良かったのになーという部分を書いていきたいと思います。

冒頭にも書いたように、この作品、そんなにつまらないとは思いません。

絵はそこそこ描けてますし、読みやすい絵柄だと思いますし、第一話もストレスなく読めました。中々悪くないじゃんと思いました。

ただ、長年のジャンプやマンガを読んできた感想としては

来年はやってないな

と直感的に、打ち切られるタイプの作品だなとは思いましたね。

いやーね、ほんとにお世辞抜きにして悪くはないと思うんですよ。

これよりも他にとっとと終わらせろと感じる作品も多数あるんですが、なんというか読めるけど続きが気にならないんです。

面白くないわけではないし、どっちか白黒つけろと言われると、そこそこ面白いと言ってもいいぐらいなんですが、どうにもこうにも無味無臭なんですよね。

数話読んで見てもいかにも王道というスポーツマンガなんで期待は出来そうなんですが、

ちっとも続きが気にならないんです

それはなぜなんでしょうか。

リアル感のない等身大系主人公

まず、この作品のそもそもの問題点は主人公だと思います。

キャラクターとしては弱いですね。

実は彼にはある能力が隠されており、徐々にそれが明らかになっていくのですが、それでも表面上はどこにでもいる平凡的な少年という感じで、体格もかなり貧相です。

それが身近にいるスーパープレーヤーとともに頂上を目指していくというお話なんですが、最近はこういった等身大系の主人公が多いですよね。

「僕のヒーローアカデミア」の緑谷出久しかり、同系統のマンガの「アイシールド21」の小早川瀬那しかり、マガジンの「DAYS」の主人公の柄本つくしのようにどこにでもいるような少年です。

一番近いのは「DAYS」の主人公かな?とは感じるものの、ここがそもそもの失敗かなと思うんですよね。

主人公の桜は真っすぐに前を見るラグビー大好き少年という設定で、もう一人の彼の運命を変える少年である雪兎は父親に対してコンプレックスをもつスーパースター候補という設定なんですが、これは「DAYS」と非常によく似ているにしてもなぜ雪兎のほうを主人公にしなかったのか?とは感じてしまいます。

ラグビー自体はマンガ的にならずにしっかりとしたスポーツとして描いているからこそ思うんですが、そうなるとどうしても主人公の真っすぐ過ぎるところがいかにもマンガ的過ぎるというか、違和感しかないんですよね。(まだ「DAYS」のつくしのほうが現実にいそうな気もしますし・・・)

こういう現実離れしているところが

ああ、これが今のジャンプなんだよなぁ・・・

と感じてしまうんですよね。

また秘められた能力が小出しにはなっていくものの、それに合わせたストーリー展開がワザとらしく感じてもしまいます。

まぁ例えると、キン肉マン的という感じなんです。

それに対して雪兎はというと物凄い能力を持ちながらコンプレックスを抱えているなど人間らしい部分を持ち合わせていますし、桜の最初に登場してきて温かく見守ってくれる友達(名前忘れた)なんかのほうが親近感が湧くんですよね。

主人公だけ異物なんです。

おそらく作者や編集は主人公の成長物語とラグビーのすばらしさを伝えたかったんだと思いますが、単純に面白い作品に仕上げるのであれば、雪兎を主人公として、弱小ラグビー部を全国一に導く話にしたほうが分かりやすく、読者もついて行きやすかったような気がします。

「ONE PIECE」のルフィのような無垢で真っすぐ進む主人公もいいと思うんですが、リアル路線のスポーツマンガでこの主人公だと、どうしても幼稚な感じを受けるんです。

まぁほとんどこの部分がこの作品をこじんまりとさせているすべての原因だと思います。

ラグビーが原因というより見せ方の問題

次に、やっぱりラグビーになじみがないのが、面白くない原因だと感じる人(これは逆に編集者のほうかもしれません)がいるかもしれませんが、この部分は致命的ではないと思います。

確かにキャッチ―な題材ではないと思うんですが、かつて「スラムダンク」が連載開始したときはバスケットボールというのは日本で人気スポーツではありませんでしたし、いまだとスピリッツでは「あさひなぐ」という薙刀マンガがしっかりとマイナースポーツを題材にして作品として成立させています。

これはやはり特徴的なキャラクターがまわりにいたり、魅力ある主人公が読者のハートをつかんでいたのが成功の原因だったとは思います。

また馴染みのないスポーツを素人である主人公を通して徐々に読者に馴染ませるという展開で解決させていますね。

逆にこの作品は主人公が幼少期からラグビーにガッツリはまっているはずなのに、このインターネットが発達している時代に一人でラグビー部を運営し、ラグビーを実際にやっていないというおかしさ、このあたり最初の設定で違和感しかないのが致命的なように感じます。

こうなると少年誌なのでどうしてもラグビーそのものを一から説明する必要が出てくるため、そのためのストーリーが必要になっているのが蛇足に感じます。

こうなると、どうしても序盤の早い段階で読者のハートをつかまないといけないジャンプでは厳しくなってしまいますよね。

個人的にはとっと主人公を試合の中に掘りこんで、その中から才能の一部を見せたり開化させるという展開がベストだったような気がします。

色々な部分で感じる既視感

最後に、この作品は新人マンガさんのデビュー作品としては、非常によく出来てはいるんですが、なんとなくまとまり過ぎているという印象を受けます。

王道系のスポーツマンガなので仕方がないという感じもしますが、等身大(という印象)の真っすぐで無垢な主人公は最近の少年マンガでありがちですし、実は自分たちのチームや主人公本人が特殊いうのは「アイシールド21」や「黒子のバスケ」的、スペシャルな仲間に助けられながら本物になっていくのは「DAYS」的とも言えます。

そういう部分がどうしてもテンプレートどおり過ぎるという印象を受けます。

こういうのは読み切りだと非常に活きてきて読みやすくはなってくるとは思うんですが、どうしても二話、三話と繰り返していくと展開的な驚きがなくなってきます。

いい作品というのは結局のところ、読み手と主人公をいかにリンクさせて物語に引き入れるのが鍵だと思うのですが、全体的に面白い作品にしようというのが表に出過ぎてしまい、どうしても物語の外から作品を見せられている感じがするんですよね。

必要以上の説明はいらないんですよ。

こういったラグビーというあまり馴染みのないスポーツを題材するのであれば、一つ一つ説明的に行くのではなく、「ヒカルの碁」のようにルールは分からないけどその世界観に強引に放り込むほうが雰囲気と魅力を肌で感じ取ることができ、いつの間にかはまっていたというパターン持っていきやすかったと思います。

ラグビーというのは細かいルールが分からなくても、実際に自分でやってみたり、試合を見るとその凄さや魅力がわかりスポーツのはずです。

そういった本質をこの作品ではとりこまなかったのが致命的な原因だったと思いますね。

まだ序盤であり、ラグビーのワールドカップもこれからどんどん盛り上がっていく可能性はあります。今ならまだ遅くないはずなので、ラグビーの熱い部分を作品に取り入れていってほしいですね。

これから長続きさえたいのであれば、主人公や雪兎の能力バトルにもっていくべきではないと思います。

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