「BE BLUES!〜青になれ〜」 :このマンガが面白い(17)

これぞサンデー! の王道スポーツ漫画

週刊少年サンデーと言えば、以前も記事にさせていただいたように、現在は30万部程度しか売れなくなり、かつての三大少年誌(週刊少年ジャンプ、週刊少年マガジン、週刊少年サンデー)としての面影がありません。

その原因は少子化や電子書籍の普及にもあるのでしょうが、実際に読んでいる側からすると、ターゲット層を完全に見誤っている印象を強く感じます。

かなりマニア向けの絵柄やストーリーの作品が多くなっているのが現状なのですが、一般的な読者からすれば読む前から敬遠されるような”非王道系”の作品ばかりを並べれば売れなくなるのは必然の流れでしょう。

しかしながらかつてのサンデーと言えば、「機動警察パトレイバー」やあだち充、高橋留美子作品群の独特のほのぼのとした間を持った作品とともに得意としていたのがスポーツ漫画でした。

「六三四の剣」(剣道)にはじまり「スプリンター」(陸上)、「帯をギュッとね!」(柔道)、「健太やります!」(バレーボール)や「うっちゃれ五所瓦」(高校相撲)、「ガンバ!Fly high」(体操)、「モンキーターン」(競艇)など、それまで取り上げられることの少なかったジャンルのスポーツまで大ヒットさせるなど、その作品作りの上手さやノウハウはジャンプやマガジンにはないものでした。

なぜこの路線を引き継がないのか僕は不思議でしょうがないのですが、そんな中、今でもかつてのサンデー作品の良さを残していると感じのが、今回取り上げる「BE BLUES!〜青になれ〜」です。

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「BE BLUES!〜青になれ〜」とは

2011年から週刊少年サンデー(小学館)で連載されている田中モトユキ先生原作による漫画となります。

田中モトユキ先生と言えば、バレーボールを題材とした「リベロ革命!!」(全13巻、小学館)や高校野球を題材とした「最強!都立あおい坂高校野球部」(全26巻、小学館)などスポーツ漫画で実績がありましたが、そんな田中先生が描く本格派サッカー漫画です。

あらすじ

主人公である一条龍(いちじょうりゅう)は、将来のサッカー日本代表を夢見るサッカー少年ですが、その実力は地元の有望なサッカー少年に比べても別格の存在であり、プロのユースチームのスカウトが注目するほど埼玉エリアの少年サッカー界では知られた存在でした。

そんなある日、龍は幼馴染の双子の兄妹、青梅優人(あおゆめゆうと)と勇希(ゆうき)との帰り道に交通事故に遭いそうな優人をかばい、階段から転落してサッカー生命を脅かすほどの大怪我を負ってしまいます。

誰もが”サッカー選手として終わった”と思い、その存在は過去のものになっていきますが、日本代表を目指し不屈の精神をもつ龍は、中学時代の二年間をリハビリにあてサッカー選手として復活します。

しかしながらサッカー選手として伸び盛りの時期をリハビリに失った代償は大きく、かつての繊細なボールタッチや一試合を戦う体力は失っており、ストライカーとして全盛時の能力には程遠いものでした。

それでも彼は今の自分に出来ることを追い求め、戦術判断やプレースキックの精度を高めてチャンスメーカーとしてモデルチェンジをします。

”かつての天才サッカー少年”としての名前は二年経っても同世代のサッカー少年たちには忘れられていませんでしたが、彼らもその衝撃と現在のギャップに驚かされます。

自分だけでなく周りからも過去の自分と比べられる龍でしたが、純粋な精神の持ち主の彼はまわりの助けを受けながら純粋に前を向いて進んでいきます。

というようなお話です。

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感想

今のサンデーでは異色とも言える正統派作品

さて、ここからがこの作品に関する僕なりの感想や批評なんですが、この作品、サッカー漫画としては特段、真新しいことをしているわけではありませんし、挑戦しているわけではありません。

冒頭にも書いたように王道のスポーツ漫画と言えます。

設定こそ、かつての天才が怪我をしてマイナスからスタートしますが、内容自体は主人公が仲間ととともに頑張り、目の前の敵を打ち破っていくという、サッカー漫画のテンプレート通りになっています。

だから、あまり期待値を高くしてこの作品を読むと、おそらく拍子抜けする人も出てくるとは思うんですが、サンデーの現状を垣間見ると、数少ない

お、いいじゃん!

と思える作品に感じます。

これも変わったことをしておらず、線のしっかりとした分かりやすい絵で、オリジナリティのある初期設定、デフォルメ感のない等身大のキャラクター、そこに友情・努力・勝利の三点セットがしっかり入っているので、途中から読んでも取っつきやすく、理解しやすい内容になっています。

これこそが王道系の正統派作品の利点でしょう。

他のサンデーの連載作品がどちらかと言えば変化球的な作品ばかりなので、余計に目立ってしまいます。

ただ、最近の傾向として王道系の作品が減っているのは、もしかして王道を描けない漫画家が増えているのかな?という感じもしてしまいます。

結局現在のサンデーのダメなところはこういった正統派のストレートな作品が少ないのに、変化球ばっかり投げているところがマンガ雑誌としてキワモノになりつつあるのかもしれません。

あ、この作品というよりも、サンデーのダメ出しになってしまいましたね(笑)。

昔と今の主人公のギャップを周りも使いながらうまく活かせている

少しズレてきたのでこの作品のいい所を取り上げるとすると、やはりポイントは”天才サッカー少年”だった時の一条龍と”現在”の一条龍の対比を今も忘れずにストーリーが展開している点です。

例えば、主人公自身が昔の自分とのギャップに悩み苦悩する様は序盤ではテーマになっており、これは当然つかみとしては最高だと思います。

ただ、これだけだと中々話は進みませんし、いずれ陳腐化します。

そこを解決しているのが、周りの彼に対する意識の描写です。

彼が進学したり活躍するにつれて、かつてのライバルたちや同年代の選手が、”あの天才、一条龍!?”という感じで、人によっては賞賛したり、今は昔ほどの力がない、といった反応をしたり、また場合によっては主人公の全盛期を知らないチームメイトに、そのポテンシャルを力説したりします。

この作品を読んでいる読者にとっては主人公一条龍の凄さは十分わかっているので、このあたりに胸熱ポイントであったり、もどかしさを感じさせるポイントになっているのですが、通常のサッカーシーンを見せ場にするだけでなく、こういった心理的なゆさぶりが読んでいる側に響いてくるような感じがします。

また、最近の話ではかつてのチームメイトが、主人公の挫折を期にさらに努力して、再会した時には雲の上の存在になっていたりするのですが、この天才児だった時の主人公を軸にしながら登場人物たちのパワーバランスがうまくとれていたり、上下したりする点などが、読み手に”本来の主人公の実力はこんなものではない!”という絶妙なもどかしさを感じさせ、応援したくなる存在としてうまくストーリーがまとまっています。

まだまだ、話としては志半ばというかんじなのですが、試合の描写のテンポもよく中だるみもあまりありません。

着地点としては天才だった主人公がまた唯一無二の天才として復活するというところがベストなんでしょうが、展開が読めそうで読めない正統派の作品だからこそ、続きが気になる作品であり、いい作品だと思います。

予想の斜め上をいくタイプの作品ではないのですが、なにか面白いサッカー漫画を求めている方にはおススメできます。

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