「バクマン。」はやっぱり神マンガだった件:このマンガが面白い(15)

「DEATH NOTE」コンビが描いた平成版「まんが道」

バクマン。
日本においてマンガが商業化されてから半世紀以上が経ちます。

黎明期には手塚治虫先生を筆頭にして藤子不二雄(コンビ)、赤塚不二夫、石ノ森章太郎などのいわゆる”トキワ荘”出身の諸先生方が切磋琢磨して、現在のマンガの世間的認知度を確立させたことは間違いないでしょう。

そんな時代の読者が成長し、すでに老年に差し掛かってきたことももあってか、”マンガ=子供の読む物”というステレオタイプな考えも大分感じなくなったように思えます。

また、最近ではマンガ原作で、ドラマ化や映画化されることも非常に多くなり、ネタに困ったらとりあえずマンガを映像化しようという流れのも、いかにコンテンツとしてのクオリティが高い、引き出しが多いことの証明でしょう。

さて、今回はそんながマンガ業界を真正面から描いた人気作品「バクマン。」を取り上げてみたいと思います。

同系統の作品として前述の”トキワ荘”を舞台とした「まんが道」などが有名ですが、この平成版「まんが道」と言える「バクマン。」がどんなマンガだったのか振り返ってみたいと思います。

(画像の引用:「週刊少年ジャンプ」公式サイトより)

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 「バクマン。」とは


2008年から2012年まで週刊少年ジャンプ(集英社)に連載された人気マンガで、原作は大場つぐみ先生、作画は小畑健先生となります。

この大場つぐみ・小畑健コンビと言えば何と言っても大ヒットマンガ「DEATH NOTE」(2003年から2006年まで同じ週刊少年ジャンプで連載)が世界的にも有名ですし、作画の小畑健は「ヒカルの碁」(1998年から2003年まで週刊少年ジャンプに連載。原作はほったゆみ先生)でも大ヒットを飛ばした週刊ジャンプが誇るトップ中のトップの作家さんですよね。

当時はそのコンビの新作ということでもちろんかなり話題にましたね。

また原作の大場つぐみ先生はこれまた週刊少年ジャンプのヒットマンガ「ラッキーマン」の作者ガモウひろし先生ではないかと言われていますが、これについては次回の記事で取り上げてみたいと思います。

あらすじ

中学三年生の真城最高(ましろもりたか:通称サイコー)は絵を書くことが得意な少し内気な少年で、成績もいたって平凡、これといった目標もなく授業中に同じクラスの好きな女の子亜豆美穂(あづきみほ)をノートにスケッチするのが日課になっていました。

そんなある日教室にそのノートを置き忘れたサイコーですが、同じクラスで学年一の秀才高木秋人(たかぎあきと:通称シュージン)にそのノートを見られてしまい、亜豆をこっそり書いていたことが知られます。

しかしそのシュージンはそのことを笑うわけでもなく、サイコーの絵の上手さを絶賛します。実は学年一の秀才のシュージンは大のマンガ好きで、マンガ業界に興味があるのですが、絶望的に絵が下手なこともあり、なんとなく夢見ていた程度だったのですが、サイコーの絵の才能を知り一緒にプロのマンガ家を目指そうと誘います。

ところが、サイコーにも秘密があります。

実は彼の叔父はかつて週刊少年ジャンプで連載していた人気マンガ家川口たろうだったのですが、彼が一発屋で終わり、連載や人気マンガ家になるための苦労を間近で見ていたサイコーは一旦断ります。

簡単にマンガ家にはなれないことをシュージンに諭すサイコーですが、シュージンが叔父川口たろうやその作品を大好きだったことや、彼の熱意、そしてシュージンと川口たろうが言っていたことがリンクし、ついてには作画真城最高、原作高木秋人でプロのマンガ家を目指すことにします。

そしてサイコーはシュージンなどもおせっかいなどもあり、あこがれの人亜豆美穂が実はサイコーのことが気になっており、声優を目指していることも知ります。

色々なことも重なり、二人は亜豆の家を訪れ二人でマンガ家になることを宣言しますが、そこでサイコーは緊張のあまり”結婚をしてください”とうっかりプロポーズしてしまいます。

しかしながら、亜豆も実はサイコーのことが昔から好きだったことを告白し、両思いだったこともあり、OKを出します。

ただ真面目でまだ若く、夢半ばだった二人はある条件をつけ結婚の約束をします。

それが、サイコーとシュージンのマンガがアニメ化され、そのヒロインの声優を亜豆が務める日までは今後一切会わないというものでした。

そんな彼らの三人の十年におよぶ物語が始まります。

というあらすじですね。

僕なりに思い出しながらまとめてみましたが、もしかしたら突飛な展開に見えるものの、マンガではしっかりと理由付けのされた展開で話は進みます。

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久々に読んだらめっちゃ面白かった

さて、ここからが「バクマン。」の感想や僕なりの評価なんですが、いやー久しぶりに最初から読んだんですが、めっちゃ面白かったですねぇ。

実は今回は以前に紹介したことのある「ジャンプ+」という週刊少年ジャンプのスマホ向けアプリで読んだんですが、100時間全話無料だったんですよ。

恐らく今はもう100時間経って終わっていて読もうとしても有料なんですが、たまにこのサイトは思い切ったことをするので、切れませんね(笑)。ちなみに今は「ワールドトリガー」や「火の丸相撲」なんかが少しづつ無料開放されています。

まぁ、今回はアプリの宣伝がメインではない(実はこのアプリのアフィリエイトがないだけという噂も・・・w)なのでこのへんにしておきますが、よかったらのぞいてみてください。

そして肝心の中身ですが、リアルタイムで読んでいた作品とは言え、改めて読みなおしてみるとやっぱり最近の連載作品にはない圧倒的とも言えるクオリティ。

最後のほうは泣きましたね(笑)

いやー僕は涙腺が固いほう(何の自慢?)なんですが、序盤からの流れや終盤の締め方といい完璧すぎる内容でした。

リアルタイムでジャンプ誌面上、そのあとコミックスで改めて読破、アニメ化でそれも視聴、そして実写映画とほとんどすべて、何回も見ている作品とは言っても

やっぱりおもしれえなぁ こんちくしょう

この言葉しかありませんね。

マンガ家のリアル、ジャンプのリアル

まだ読んだことないという方のためにどこが面白いのか解説していきたいと思いますが、まずは何と言ってもリアルさがこの作品の魅力のひとつでしょうね。

人間誰しも本気度は違え、一回ぐらいマンガ家にあこがれたことはあると思います。

マンガを作るにはどういった作業が必要で、どういった苦労が必要かが丁寧に描かれていますし、連載の苦しさやヒット作を作りだすことがいかに難しいかが、等身大で描かれています。

作中に様々なマンガ家やアシスタント、編集が登場しますが、彼らの群像劇としても面白おかしく、時には涙などもあり、いかにマンガ家という職業が大変かが分かりますね。

恐らくこれを見たらおいそれと簡単にマンガ家になろうとは思わないでしょうね。

ただ、逆にマンガを描く喜び、読者を笑顔にする喜びも描かれており、さすが元々マンガ家をしていた人が原作をしているだけはあるなぁと思いますね。

年頃のお子さんを持つ親御さんたちは子供が”マンガ家を目指す!”と言い始めたら、とりあえず「バクマン。」を買って読ませるといいでしょう。

とりあえず現実を知って慎重になるはずです(笑)。

そしてもう一点、リアルさで言えば、ジャンプの内側を知れるところがこの作品の魅力でしょうね。

すでに初回掲載から十年近く経っているので、多少方法は変わっているかもしれませんが、衰えたとはいえ今でもマンガ雑誌ではNO1の存在である週刊少年ジャンプに作品を連載するにはどういうプロセスが必要かや、どういった方法で掲載や打ち切りを決めているか、持ち込みにはどうしたらいいかも親切丁寧に描かれており、業界漫画としても楽しむことができますね。

同じ編集部を舞台とした「重版出来」なんかも非常に面白い作品でしたが、「バクマン。」はよりリアルに、週刊少年ジャンプの編集部の人たち一人一人までキャラクター付けしてしっかり描かれているのもこの作品のすばらしさではありますね。

変な話、主人公の二人を主人公にしなくても、編集部側から描いても成立してしまいますね。

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圧倒的画力と緻密な原作

作中劇のクオリティの高さ

読んだことある人なら分かると思いますが、この作品に関しては色々な部分が完璧すぎて笑うしかないですよね。

例えば、この作品のアニメ化や実写化は成功した部類に入ると思いますが、元々画力が低かった作品にアニメ化によって迫力と安定感がでた「進撃の巨人」や、俳優の演技力や演出によりよりキャラクターに味がでてきた「重版出来」、逆のパターンでは元々の画力が高くよく書かれていたために、アニメ化で陳腐化してしまった「NARUTO」などがありますが、「バクマン。」に関しては原作のマンガこそ至高と言えると思います。

アニメと実写映画に関してはよくぞ原作のクオリティー・面白さを保ったなというのが印象でしたが、これも原作が完璧すぎたせいもあるのでしょうね。

まず絵に関しては作画力では最高レベルとも言える小畑先生の力も大きかったでしょう。

最近のマンガだと背景などには実際の写真をトレースしたり、パソコンを使って処理する方法もあるようですが、どうしても作者の画力低いと背景と人物がどうしてもかみ合っていない作品も多くあります。

今回の「バクマン。」も同様の手法で描かれた場面も多いのでしょうが、細部まで細かく描かれたカラー絵などは写真とはまた違った説得力を感じさせますね。

また、この作品は多数の作中劇・架空の作品が登場します。

たくさんのマンガ家がそれぞれの作品を独自のタッチで描くようになっていますが、このあたりも一切の手抜きがなく、ストーリーや書き分けさえも完璧で、それぞれの登場人物に独自のゴーストライターさえいるように感じるほどです。

これによってライバルのマンガ家たちも血の通った愛すべきキャラクターとして動いています。

たまにある主人公のギャグ的リアクション描写もリアル路線の描き方を考えると、素人ながらものすごいことをしているように感じますね。

どれだけ引き出しをもっているのでしょうか。

間延び間のないすぐれた”王道”原作 これも”ジャンプ”

そして大場つぐみ先生の担当するストーリーですが、前作であるSFサスペンスの「DEATH NOTE」は海外のファンにも知られるほどの作品に成長し、その魅力は設定やどんでん返しに比重が置かれている印象でした。

そこから一転マンガ家、もしくはそれを目指す若者を描いたのが今作だったのですが、連載開始当初は”なんか変なのが始まった”というのが正直な感想でしたね。

「ヒカルの碁」や「DEATH NOTE」を期待していた読者は最初僕のように肩透かしを喰らった方も多かったでしょう。

やはりジャンプ作品というのはよく言われているように”友情・努力・正義”が根底にあり、読者も自然にそういった作品を求めてしまうものですが、直接相手と殴り合うわけでもなくいつのまにかこの三原則のテンプレートに乗っかっており、終わってみれば「DEATH NOTE」より”王道”を行った作品に思えます。

この”王道”感があったからこそ魅力的な主人公が出来上がり、自然と応援したくなりましたよね。

また、あくまで自分たちの作品達(分身)で戦うというスタイルはありがちではあるものの、それをマンガでやってしまうという発想は長いマンガの歴史の中でもあまりなく、斬新でしたね。

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恋愛作品としても”王道”

最後に「バクマン。」と言えば何と言ってもサイコーと亜豆の”プラトニック”ラブ”抜きには語れないでしょう。

話の大きな軸や根底にこの二人が最初に交わした約束があったからこそ、サイコーとシュージンの行動原理に説明がつきますし、バトル要素や友情要素にプラスしてこの小学生レベルとも言える恋愛ストーリーが物語に感動と深みを与えてくれていました。

特にこの作品のラストは”え、この場面で終わりなの?”というようなものでしたが、テーマから考えると最高の終わり方だったと個人的には感じますね。

当時からすでに女性読者を意識した恋愛マンガはジャンプに存在しましたが、恋愛マンガとしてもこの作品は”王道”を行っており、女性読者も多かったのではないのでしょうか。

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