「アサギロ 〜浅葱狼〜」:このマンガが面白い(16)

アサギロ 〜浅葱狼〜

新選組を描いたマンガの中では出色の作品

今回ご紹介させていただきたい漫画は新選組の活躍を描いた「アサギロ 〜浅葱狼〜」(あさぎろ)という作品です。

昔から坂本龍馬や新選組、国を憂う幾多の志士達の活躍した幕末は戦国時代とともに人気のコンテンツとして数多くの創作物が生み出されてきました。

大河ドラマしかり、マンガや小説のネタとしても使い古されたと言ってもいいぐらいの題材ですよね。

そんなこともあってか、世間には歴女(そう言えば最近聞かなくなりましたが・・・)という言葉も存在したりしますが、昔から幕末の中でも新選組の人気は非常に高く、彼らゆかりの地を訪れる女性ファンを今でもテレビで目にすることは多いと思います。

ただ、この”新選組”をひとつのコンテンツとして考えた場合、個人的にうまく消化している作品はそれほど多くないような気がします。

かつて三谷幸喜さんの脚本によって映像化された「新選組!」(2004年:NHK)こそ、今でも語られることも多いとは思いますが、これがマンガになると思い出すのに若干苦労してしまうのは気のせいでしょうか。

新選組やその隊員を敵役に描いた面白いマンガはいくつかあるにしても、新選組中心に描いた作品となると、まぁパッとは思い浮かびません。

そんな中、僕が”最近のサンデーがつまらない”という記事をこっそり書こうとして、うっかり着いたのがこの「アサギロ 〜浅葱狼〜」という作品なのですが、ずばり

結構、面白いんです!

それではこの作品について少しだけ紹介させていただきます。

(画像引用:小学館「ゲッサン:アサギロ 〜浅葱狼〜」公式サイトより)

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「アサギロ 〜浅葱狼〜」とは

ヒラマツ・ミノル先生により2009年からゲッサン(月刊少年サンデー:小学館)で連載されている作品となります。

ちなみに「アサギロ 〜浅葱狼〜」はゲッサン創刊時から連載されている作品ですが、ゲッサンで創刊時から今も連載中(2018年12月現在)の作品はあだち充先生の「MIX」、島本和彦先生の「アオイホノオ」、ながいけん先生の「第三世界の長井」と四つしかありません。

あらすじ

1854年、白川藩(現在の福島県の一部)の江戸屋敷では、藩士の弟に大人顔負けに剣の腕がたつ12歳の少年がいるということで話題になります。

その剣の腕を耳にした藩主は目の前でその腕を確かめたいということで、藩の剣術指南番である村上を藩から呼び寄せ、立ち会わせることにします。

村上は軽く少年の相手をしてあげるつもりで江戸に来たつもりですが、木刀での立ち合いでありながら、真剣での殺気を放つ少年の前に後れをとり、敗れてしまいます。

剣術指南番という立場でありながらの失態に村上は切腹することになりますが、自らの剣を託す代わりに少年には己の介錯を頼みます。

その少年こそ沖田惣次郎、のちの新選組一番隊隊長沖田総司だったのです。

新選組

幕末に京都で反幕府活動を行う人物や団体を取り締まった元浪士を中心とする団体となります。

江戸幕府滅亡後は旧幕府側として戊辰戦争を戦い敗れており、その主だった人物は処刑ならびに戦死しています。

とくに有名なのが局長近藤勇(こんどういさみ)や、副長土方歳三(ひじかたとしぞう)、一番隊隊長を務めた天才剣士沖田総司(おきたそうじ)で、他の隊長格にも様々な逸話が残っており、現代でも女性を中心として彼らを信奉している人たちもいますね。

※新選組についての説明や人物紹介などはこの記事内でも行うつもりでしたが、書いているとあっさり2000文字を超えてきそうだった(笑)ので、次の記事でまとめることにしました。

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週刊少年サンデーをディスろうとしてたらうっかり見つけた

さてここからが感想ですが、冒頭にも書いたようにこの「アサギロ 〜浅葱狼〜」という作品はつい最近まで読んだことがありませんでした。

次の記事は批判覚悟でリアルに”(週刊少年)サンデーつまんねぇ!”という記事を書こうとしていたんですよ。

ただ、最近(掲載作品がつまらないということもあり)サンデーそのものをまともに読み込んでいないので、イメージだけで書いても悪いかな?とも思ったり、アンチが湧いてきて”ニワカ判定”されても嫌(一応1980年代から2010年ぐらいまでの作品は読んでいる)なので、とりあえずサンデーのアプリでもダウンロードしてきて、近頃の作品を一通り読んで見たわけです。

まぁ、週刊のほうは予想通り(笑)だったわけですが、そこのアプリでふと見つけたのがこの作品でした。

えぇ”こんなの知らん!”と、思ったら”ゲッサン(月刊少年サンデー)”だったわけですが、コンビニにまず置いてませんから、そりゃ知りませんわね。

最近は講談社のモーニングや小学館のスペリオールすら見つけることができない週もあるぐらいですから、時代は紙じゃないのかなぁと思ってはしまいますが、こうやって世間的露出が減るということはプロ野球と同様、コアなファンにしか受け入れられなくなってしまう流れとなり、ライトユーザーを排除してしまうので、少し考えものだと思います。

本格的新選組マンガ

で、肝心の内容ですが、新選組が中心となる作品は少年マンガだとそんなに思い浮かびませんよね(僕が思い出せてないだけという気も・・・)。

僕の勝手な先入観もあるかもしれませんが、やっぱり新選組は若い歴史好きの女性がアイドルのように信奉する存在のようなイメージがあり、どちらかと言えば少女マンガの題材という気がしますし、少年マンガだとどうしても主人公たちの敵というイメージが強いと思います。

だから今回少年マンガで新選組を中心として描くのは思いのほか新鮮だったわけですよ。

今ふと思い出したところでは「修羅の刻(しゅらのとき)」の幕末編でこそ比較的新選組よりではありましたがメジャーな作品でガッツリ沖田総司や近藤勇が主人公というのは、僕的には思わぬツボでしたし、歴史的史実や資料に基づきながらも、うまくフィクションを組み合わせるなど、新たな切り口にも感じ、読みごたえは十分でした。

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骨太な内容を支える実力派マンガ家ヒラマツミノル

感想と言いながら肝心の中身やいい所を書いていませんが(笑)、どうしても史実ベースのため展開はある程度見たり聞いたりした内容なんです。

だから、あーだこーだという評価もしにくいんですが、こういった幕末のお話になると、攘夷や開国、討幕や佐幕など登場人物によって主張は様々です。

だから下手をすると堅苦しくなってくるのがこの時代のマンガやドラマにありがちな展開なんですが、この「アサギロ 〜浅葱狼〜」という作品は、そこをうまく回避しています。

それが途中途中に入れられるシリアスなギャグなんですが、例えば物語序盤に白川藩剣術指南番の村上が江戸に立つ際に、娘達から求められたお土産が、なんと

東京バナナ(笑)

とぶっこんできたりします。

いや、物語は極めてシリアスなんですよ。だから真面目な人が予期せぬ展開でボケるというような感じなので、読んでるこちらは完全に虚を突かれてしまいます。

そしてその後の展開は何事もなかったようにシリアスに展開するなど、この匙加減が絶妙なわけなんです。

だから物語が一直線になり過ぎず、うまく緩急をつけられている点が素晴らしく読ませる展開になっているんですよね。

そして失礼ながら”ゲッサン”でなぜこれほど、画力がありながら抜群の展開力を出せる作家がいるのか不思議に思ったんですが、あとで作者の名前を調べてみたら納得してしまいました。

作者のヒラマツミノルさんとは実は僕ら世代にはど真ん中なマンガ家さんで、1990年代にはモーニング(講談社)などで「REGGIE」や「ヨリが飛ぶ」という作品を連載していたんですよ。

この頃は週刊少年ジャンプも黄金世代だったんですが、実はモーニングも全盛期であり、「課長島耕作」を中心として、強固なラインナップを形成していたわけなんですが、このヒラマツミノルさんも当時は主力級の作品を書いていた人なんですよね。

実力的にはクリーンナップかその前後を打つほどの力のある作品を生みだしていた人なんですが、僕としては完全にモーニングのマンガ家さんだと思っていたので、まさか小学館でこの人が書いているなんて思わずに、最初は結び付かなかったわけです。

当時のモーニングでの作品を知っている人向けに説明すると、前は癖のある絵の人でしたが、この作品ではその癖が若干薄味になってより繊細になっています。

だから画力だけで評価しても非常にクオリティは高い作品です。

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新選組や沖田総司をヒーロー化せずに等身大の彼らを描いている

そしてこの作品の読ませるポイントは、新選組が特殊な集団として描かれていない点にも好感が持てます。

むかしからどうしても坂本龍馬や長州藩や薩摩藩の敵役として描かれることの多かったため、世間的なイメージとしては新選組何か特殊な集団のイメージが世間には存在すると思います。

美形の天才剣士として有名な沖田総司なんかはその最もたる例だと思いますし、新選組は旧幕府の犬として一体となって京都の警備活動を行っているというイメージもあると思います。

もちろん歴史に詳しい方であれば、それが間違った認識であるということはよくご存じだと思いますが、このマンガは新選組の隊員たちがそれぞれどういった思惑で新選組に加わってきたかを等身大で描くことにより、それぞれの人物像がかなり詳細に描かれています。

例えばナンバースリーでありながら世間一般ではそれほど認知度の高いと言えない山南敬助などは近藤や沖田との間で抜群の存在感のある人物として描かれていますし、井上源三郎や長倉新八などもしっかり中心人物として躍動します。

もちろん新選組内部の最大の癌であった芹沢鴨も今後の不穏な展開を巻き起こす首謀者の一人として存在感を放ちますし、新選組の物語を知っていても知らなくても十分楽しめる内容になっているわけです。

特に僕のような新選組の隊長の名前ぐらいは一通り知っているけど、詳しい出自などを知らない人なんかにとっては絶好の教科書のような内容になっており、”ははーん、こういう人たちの集まりだったのねぇ~”と今さらながら再認識しているわけです。

まとめ


アサギロ ~浅葱狼~ コミック 1-18巻セット

まとめると、この物語は新選組ファンの方には彼らの活躍を描く作品として楽しめることもできますし、逆に近藤勇ぐらいしか知らなくても若者の成り上がりストーリーや剣術もの・バトルものとしても十分楽しむことができます。

もちろん高杉晋作や坂本龍馬など幕末の志士達もでてきますので、これから受験を控えている学生さんたちにとっても勉強になると思いますので、年頃のお子さんを持つ親御さんにもお勧めできる作品です。

中々いいですよ。

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