週刊少年マガジンのバスケットボールマンガの代表格
バスケットボールマンガと言えば、何といっても1990年代に連載されていた「スラムダンク」(集英社・週刊少年ジャンプ)がすべての始まりであり、マンガ界の金字塔でしょう。
その後日本の若者たちにバスケットボールを流行らせるきっかけにもなりましたが、ブレイク以前はバスケットボールマンガどころかバスケットそのものがラグビーと同じぐらいのマイナースポーツ扱いだったことは今の若者には信じられないかもしれません。
「スラムダンク」の大ヒットによりバスケ人口が増えただけでなく、マンガのジャンルとしても完全に市民権を得たわけですが、その影響もあってか、少し前に連載が始まっていた月刊少年マガジン(講談社)の「DEARBOYS」も相乗効果的にヒットした覚えがあります。
その後は「Harlem Beat」(講談社)などたくさんのバスケを題材としたマンガが出てくるわけですが、最近だと「黒子のバスケ」(集英社)や「DRAGON JAM」(小学館)などがバスケマンガとして思い浮かびますね。
そして忘れていけないのが今回取り上げる週刊少年マガジン(講談社)で現在も連載中のバスケマンガ「あひるの空」なんですが、2017年5月現在すでにコミックスが49巻まで発売されており、週刊少年マガジンのバスケマンガとしてはもはや最長不倒級の連載作品となっているので、マガジンのバスケマンガの代名詞と言ってもいいでしょう。
そんな「あひるの空」もついにというか、連載開始から14年目にしてアニメ化されるということが今年の2月に発表されましたが、同時期に連載されていた「黒子のバスケ」と比べると随分遅かったなと思いますね。
ただ、個人的にこのニュースを聞いた時の僕の感想は”今さらアニメ化する必要はあるのか?”と思ったのですが、今回はマンガ「あひるの空」について掘り下げてみたいと思います。
(画像引用:講談社「マガポケ」より)
Contents
「あひるの空」とは
日向武史(1972年生まれ)先生原作のバスケットボールマンガで2003年から講談社の週刊少年マガジンで連載されている作品となり、現在も連載中です。
あらすじ
いつもながら僕なりにまとめてみますと・・・
主人公の車谷空(くるまたに そら)は身長が150㎝しかないかなり小柄な男の子ですが、彼の母親はかつてバスケットの日本代表でもプレーしたほどの有名な選手であり、その影響からか抜群のバスケットボールセンスを誇ります。
特に得意なのはアウトレンジからのシュートで特に3Pシュートはゾーンに入ると手を付けられなくなるほどで、度々他校の選手や観客からも賞賛を受けます。
そんな彼が長野から神奈川県に移り住み、入部した高校が九頭龍(くずりゅう)高校(通称クズ高)だったのですが、入部当時は不良のたまり場でバスケができるような環境ではありませんでした。
しかしながら空などの尽力もあってか、のちにバスケ部として正式な活動を始められるようになります。
活動を進めていくうちに部員たちは徐々に増え始め、細身でスタミナに難があるものの2m近い身長を活かしたプレイとフックシュートが得意なセンター”茂吉”、従来からバスケ部いる学校でも有名人の双子の一人で190㎝を超える身長がありながら元々ポイントガードをしていたほどの天才肌である傍若無人なアフロのスモールフォワード”千秋”、その双子の弟で抜群のジャンプ力を誇りながら兄とは違いセンスがなくシュートが入らない生真面目な不良のパワーフォワード”百春”、そして抜群の運動能力と類まれなるバスケットセンスを持ちシュートやドリブル、1on1などでも圧倒的な強さを誇るものの、過去の怪我やその生い立ちから闇を抱える広島出身のシューティングガード”トビ”など強烈な個性があつまります。
そこに元々バスケット初心者だった不良三人組やセンスを誇る新入生たちが入部してきたりして全国を目指すというお話です。
アニメの詳細はいまだ不明
2018年の2月にTVアニメ化が発表され、アニメ版「あひるの空」の公式サイトもすでにオープンしているわけですが、現在(※2018年5月時点)もその詳細は不明です。
確か週刊少年マガジン紙上でもかなり前に発表されていた記憶はあるのですが、公式Twitterアカウントも三か月経ってツイート数も2018年5月28日現在たったの4という状態で、やる気度は若干?な印象を受けますね(笑)。
マンガが大ヒットして自然発生的にこの話が持ち上がったというよりも、アニメ化のネタの一つとしてこの「あひるの空」が選ばれてただけという雰囲気をどうしても感じてしまいますが、まさかたったワンクールで終わったりはしませんよね・・・。
50巻近くでているマンガをアニメ化しようとすれば、「ダイヤのA」並みに気合を入れてやってもらいたいところではありますね。(この作品はマンガのいい部分を理解してちゃんと作られていると思います)
現段階ではコケる雰囲気しかない「あひるの空」なんですが、ネットでもアニメ化発表の時は若干盛り上がったものの、それ以降は話題になっている印象を受けないのですが大丈夫なんでしょうか。
テレビ東京系で4クールにわたり放送が決定(追記)
2019年10月からTBS系列で放送されることが決定しています。
なんと4クールにわたり放送されるということで本気度が伝わりますね。
内容的にかなりの枠を割かなければ間違いなくコケると見ていたのですが、これならしっかりと原作の良さが活かせそうなので、期待したいと思います。
ただ、原作マンガの画力が比較的高いマンガであるだけに、アニメでさらにブレイクするというのは少し難しいかなとは感じますね。
マンガ「あひるの空」に対する個人的な評価
さて、アニメ化の話は少しだけにして、ここからは肝心の本編、マンガの話をしたいと思いますが、タイトルにすでに書いているように、個人的にはこの「あひるの空」はもう終わるべきマンガだと個人的には思います。
設定はテンプレどおりもキャラクターが立っていて面白い
未読の方はあらすじを読んでもらうと分かりますが、ストーリーの出だしは不良しかいない部活に主人公が入部してくるといういかにもという設定で、このあたりはテンプレートどおりです。
また、主人公のチームメイトもいわゆる天才でいかにもマンガ(笑)なのですが、いずれのキャラクター達も個性が立っており、真面目なバスケットパートに時折挟まれるギャグパートのバランスがよく非常に面白い作品です。
このあたりはさすが週刊少年マガジンというべきか「はじめの一歩」などでもよくある時折ギャグマンガと言ってもいいぐらいのふり幅が作品に緩急をつけ、いい味を出していると思います。
また設定が少し近い「スラムダンク」との違いとして、この「あひるの空」は女子バスケット部が登場し、どこか男臭いマンガだった「スラムダンク」と比べると奥行きと広がりを出していると思いますね。
この部分では同じ講談社の「DEARBOYS」に若干近い感じはあります。
試合がくどくなり過ぎず、挫折も味うなど独特の味がある
ここまでだと、どこかであったような設定を集めてきただけのバスケマンガになってしまいますが、「DEARBOYS」と「あひるの空」は試合パートの密度の差でしょうか。
前者は主人公?の哀川がスーパーバスケットプレーヤーとして無双しまくるマンガであり、下手をすると延々と試合を見せられるのに対して、後者は試合がそれほどくどくないよう印象を受けます。
もちろん肝心なパートなので序盤から終盤などしっかり描くときは描かれますが、た作品にありがちな試合中延々と緊迫している感じではなく、同雑誌の「ダイヤのA」のように終わらせるときはスパッと試合が終わるのもくどくなり過ぎずいいと思います。
このあたりはこの漫画の好きなところですね。
また、個性的なチームメイトが大活躍するシーンも、ありえない設定ながら面白いのですが、「スラムダンク」の湘北高校のように花道が入って一気に全国に進むという、一本道の流れではなく、このクズ龍高校は”しっかりと負ける”ので一応のリアリティみたいなものは存在します。
終われと言っておきながら褒めてばかりなのですが、実際に設定や展開は面白いのです。
恋愛パート、ライバルパートが余計でテンポが悪くなる
ここからこのマンガのダメだと思う部分を書いていきますが、現状「あひるの空」がどうも停滞気味だと感じる部分はやはり物語のスピード感のなさだと思います。
他のバスケマンガとは違い、バスケットパート以外にそれ以外の部分を取り入れたギャグパートは非常に押し引きの部分でいい間を取っていると思いますし、女子部員などが絡んでくるのも登場人物たちの人間的な要素を描写する上では非常にいい部分だと思います。
実際に僕がこの作品が面白く感じてたのはこのあたりのバランスです。
しかしながら最近多くの読者が感じているであろう退屈さは、登場人物たちの描写を少し掘り下げすぎたことに原因があるように感じます。
この作品はたまに主人公やチームメイトの色恋の話がでてきたりしますが、正直多すぎますし、主要人物全部を描こうとしている節さえあります。
またたまに対戦するチームのバックボーンを描くのに数話使われることもあり、僕としては適度にスクールライフを楽しみながらも試合でチームが無双するのを見たいのに、横道にそれたらそれっぱなしになってしまい、王道バスケマンガとしては少し外れ気味な感じがします。
例えるとすれば将棋マンガの「3月のライオン」で主人公が最近将棋を指していないのに似ているのでしょうか、作品としてのせっかくの面白い部分が大枠でのテンポが悪く薄まってしまっているように感じます。
このあたりは少女マンガにありがちなよくある失敗だと思います。
そろそろクズ龍高校のバスケだけを見たい
現在この「あひるの空」の読者は僕も含めて惰性で読んでいると感じている方も多いと思いますし、ピークは過ぎたと感じている方も多いでしょう。
しかしながら作中のクズ龍高校は主人公も二年生になり有望な一年生も入っておりチームはかなり面白そうな状態という不思議な状況です。
それでいて肝心の現在の「あひるの空」がつまらない状況にあるのは、上記に指摘したような余計な部分を描き過ぎている点にあると思います。
また時間軸が行ったり来たりする時などもありますが、こういった流れも読者を混乱に陥れ素直に楽しめない状況を作り出していると思います。
「ONE PIECE」のようにすべてを描きたいという作者の思いはあるのかもしれませんが、人気バスケマンガとしてのかつて輝きを取り戻すのであれば、しっかりと主人公たちのバスケットパートをもっと濃密に描く部分を増やすことで、作品に疾走感を出しゴールへのドライブを決めてほしいところですね。
今は延々とその場でドリブルをしている状態で、ダブルドリブルしまくりです。