「3月のライオン」:このマンガが面白い(11)

3月のライオン 羽海野チカ

僕のお気に入りマンガということで、今回おススメ&ご紹介させていただく作品はヤングアニマル(白泉社)で連載中の「3月のライオン」です。

「3月のライオン」と言えば、今年の春に神木隆之介くん主演で映画化(2017年3月に前編、4月に後編)されたり、NHKで放送されているアニメのほうも第2部が始まるなど、各方面にファンがいる作品ですが、単なる”将棋モノ”にとどまらず、女性作者独特の雰囲気が時にいい味を出しており、大好きな作品です。(画像引用:「3月のライオン」公式サイトより)

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3月のライオンとは

この作品は白泉社から隔週で発行されているヤングアニマルに2007年から連載されている、羽海野チカ(うみの ちか)先生による将棋を題材としたマンガです。

最近は作者が多忙なためか、発売号によって休載することもあり、スピンオフ作品としてこの作品の登場人物の老棋士たちの若かりし日の戦いを描いた「3月のライオン 昭和異聞 灼熱の時代」が同雑誌にて併せて連載されています。(作者の羽海野チカ先生は原案のみで、ストーリー&作画は西川秀明さん)

大ヒット少女マンガ「ハチミツとクローバー」の作者が描く将棋マンガ

作者は女性の方ならほとんどの方が知っていると思うあの”ハチクロ”こと「ハチミツとクローバーの作者」羽海野チカ先生です。

「ハチミツとクローバー」と言えば、2000年代に人気を博した人気漫画ですが、先日ご紹介した「ましろのおと」や「赤ちゃんと僕」の羅川真里茂さんと同じように、少女マンガでトップクラスの人は少年マンガでも十分通用するということが分かりますが、その逆はおそらく難しいでしょうね。

藤井フィーバーはどこ行った?

ここからが感想となりますが、まずマンガよりも先に2017年前半に世間を騒がせた藤井四段による将棋ブームはいつの間にやらどこかへ行ってしまいましたね。

一時的なブームに終わったことは非常に残念なところですが、マスコミ(というかテレビ)の手のひらクルリンパぶりは本当になんとかならないものですかね。連勝している時は昼ご飯の内容を調べたり、対戦相手に密着するなど当事者にとっては迷惑極まりなかったと思いますが、あれだけ取り上げたんであれば、最後まで付き合うというか本当の意味での将棋ブームを作り出すぐらいの局があってもいいとは思いますが、本当に最近は藤井四段のその後の成績など一切の報道がありません。マスコミはただのおもちゃが欲しかっただけなんでしょうか。

最強の将棋マンガ

さてそれはさておき「3月のライオン」ですが、やっぱり面白いですねぇ。

連載しているヤングマガジンと言えば「ベルセルク」や「ふたりエッチ」などたまに爆発的なヒットを飛ばす作品を送り出しますが、この「3月のライオン」も最早この雑誌の屋台骨を支える作品に成長しました感じがあります。

週刊少年ジャンプの「HUNTER×HUNTER」ほどではありませんが、「ベルセルク」も年間を通して掲載していることがほとんどレアになってきているので、少し言い過ぎですが、もはやジャンプにおける「ONE PIECE」ぐらいの存在にはなってきていますよね。

この作品が掲載していない号なんかは、ガクーんと雑誌の格が落ちる感じがしますし、「ベルセルク」と同時に掲載している時なんかは「ONE PIECE」と「NARUTO」がそろい踏みしている時の週刊少年ジャンプぐらいの壮観さはあります。

若干表現が抽象的になってしまいましたが、これまで「月下の棋士」や「ハチワンダイバー」など将棋を題材として描いた作品はありましたが、恐らく歴代の将棋マンガの中ではやっぱりダントツに面白いのは、読み終わった後のほっこり具合や爽快感などこれまでの将棋マンガになかったものを備えているせいだと思います。

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将棋を題材としながらも日常や憎悪、人間感情を上手く表現できている

なぜ面白いのかは個人的な分析にはなりますが、まずこのマンガの一番いいところはある種”少女マンガ”している点にあると思います。

ネタバレしない程度にストーリーを紹介させていただくと、主人公の桐山玲は高校生でプロ棋士となった将来を嘱望される有望な若手(天才というまでの表現はありません)なんですが、彼は特殊な生い立ちにより心に闇を抱えています。

それをある日和菓子屋三姉妹の次女(彼女たちにも闇が存在します)に拾われるわけですが、主人公は彼女の家庭(三姉妹+じじい)のやさしさに徐々に触れながら、心の闇を少しづつ払いのけていきます。

そんなダークサイドの描写もあるバリバリの根暗系スタートなんですが、このあたりのドロドロ具合ややり取り(後に三姉妹の家庭環境でもダークな展開があります)はさすが少女マンガ出身とう言うべきか、これはおそらく従来の少年マンガの作者、男性であれば間違いなく出せない部分だと思います。

そこに上手いこと絡んでいくのが将棋での対局であったり、オフの部分でのギャグ(ほんわか)パートなんですが、このあたりの3つのパートの描き方の強弱のつけ具合がこの作品に絶妙な味をつけているように感じます。

対戦相手になるライバル棋士に関してもじっくりバックボーンを描きながらも深くなり過ぎず、かといって単なる捨てキャラにもしないなど、このあたりのセンスはやはりかつての大ヒット作品を出した作者だなと感心してしまいます。

またこの作品のいいところとしては、将棋に関しても女性ながらの視点でしっかりと描写されており、初歩的な駒の動き方や将棋とはそもそもどんな競技なのかといったところまで、ほんわかパートを使って説明しているなど、将棋を知らなかったり興味のない女性にも楽しめるなど、誰にでも楽しめる作品として成立させていることは見事だと思います。

かつて囲碁を題材とした「ヒカルの碁」が囲碁マンガとして初の空前のヒットとなりましたが、このマンガも囲碁のルールを知らなくても十分楽しめるマンガでした(僕は囲碁はガッツリ知ってるのでもっと楽しめましたが・・・)。

となるとやはりマンガというのは題材ではなく描き方とバランス感覚が重要なんだな感じてしまいますが、この「3月のライオン」には「ヒカルの碁」にはない叙情的な部分が一つの魅力として追加されています。

つまりは「ヒカルの碁」より若干大人向けなマンガではあるわけで、この作品は男性だけでなく、最近面白い少女マンガがないと感じている女性の方にも自信をもっておススメできる作品です。アニメ化された作品は僕も見ていい出来だとは思いましたが、それでもマンガのほうが面白いと感じるのは、よほど原作がよくできているからなんでしょう。

最後にこのマンガのお気に入りのシーンを一つだけ言っておきたいのですが、ジジイが新商品の開発に頭を悩ませている時に三女のアイデアにジジイが言ったセリフが最高です。

”天才キタコレ”

僕はこのシーンがツボにはまって大好きなんですよね。
これだけは絶対言っておきたかったんです(笑)