「保毛尾田保毛男」問題に見えるテレビ番組の凋落と終焉

落日のテレビ業界

今回は少しコラムのような形でお送りしますが、例の「保毛尾田保毛男」問題についてのお話です。

すでにご存知の方も多いでしょうが、先週木曜日(2017年9月28日)に「とんねるずのみなさんのおかげでした(以下みなさんのおかげでした)」(フジテレビ:毎週木曜21時から放送)の番組放送30周年を記念して、スペシャル回が放送されました。

番組は30周年記念ということもあってか、タモリやビートたけし(北野武)や笑福亭鶴瓶、今人気絶頂のお笑い芸人みやぞん他、さまざなゲストが登場していつにも増して面白い回でした。

僕も最近の「みなさんのおかげでした」に関しては、企画のマンネリ化(「食わず嫌い」や二人が素人の家に訪問したりする外ロケ)などもあり、一応内容のチェックはするものの、はずれ回の多さに見たり見なかったりすることが多かったのですが、さすがのゲスト陣ということもあってか大変楽しく見させてもらいました。

ただ、この日の放送の翌日、例の「保毛尾田保毛男」問題で放送したフジテレビのまわりではちょっとした大騒ぎになってしまいました。

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「保毛尾田保毛男」問題とは

番組をご覧になっていない方のために何が問題となっているか簡単に説明させてもらいますと、この日の放送ではタモリや笑福亭鶴瓶など大御所と呼ばれる先輩芸能人を迎えてとんねるずが絡むというスタイルで番組が放送されていました。

その様々な企画の中で番組中盤にビートたけしがとんねるずを連れて、おすすめの食べ物屋さんを回るという企画をやっていましたが、ビートたけしは30歳以上なら誰もが知っている人気キャラクター鬼瓦権蔵(おにがわらごんぞう)、とんねるずの二人はかつて番組内でも人気だった懐かしのキャラクターであるノリ子(木梨憲武)と保毛尾田保毛男(ほもおだほもお:石橋貴明)に扮して登場して、期待通りの笑いを提供してくれていました。

若い方や年配の方などご存知ない方のためにこの保毛尾田保毛男がどんなキャラクターか説明させてもらうと、いわゆるホモをネタにしたキャラクターであり、設定上は”ホモが噂されている”怪しい七三分けの髭の濃い男性なわけなのですが、番組発展期を支えた人気キャラクターであり、僕ら世代にはど真ん中でピンとくるものでした。

ただ、この放送翌日LGBT(レズやゲイやバイセクシャルなど性的マイノリティ)を支援する団体からの抗議によりフジテレビの社長が謝罪する展開となりますが、往年の有名キャラクターを登場させただけで、社長が直ぐに謝罪することになったわけで、まわりのマスコミが大反応を示したわけです。

LGBT団体の抗議に謝罪は必要だったのか?

さてこのLGBTの団体からの抗議については、その抗議内容については詳しく分かりませんし、何を目的としているかは団体のみが知るわけでどうでもいいわけですが、おそらく性的マイノリティの人を侮辱している、逆なでしたので抗議したといったところなのでしょうが、団体の趣旨からするとこれは当然でしょうね。

僕もあのキャラクターが登場した時点でこれぐらいの想像はできましたし、おそらく番組のプロデューサーあたりもある程度のクレームがあることは頭にあったと思います。

しかし今回はこの抗議を受けてフジテレビの社長が”配慮が足りなかった”の趣旨で謝罪を即日行ったわけですが、ここまでする必要はあったのでしょうか。

番組内容について触れてみると、とんねるずのタカさん(石橋貴明)は今回あの保毛尾田保毛男として登場はしましたが、登場したシーンでお決まりのフレーズを言うのみで、番組そのものはそのキャラクターを封印して進むものでした(おそらく出演者や制作側もコンプライアンスの問題は頭にあったはずです)。

つまり特にホモ(ゲイ)をバカにするような内容でなかったわけですが、おそらくこの健常者が病気(性的マイノリティ)を演じるというのが団体の勘に触ったのでしょうね。

普通の感覚であればこの抗議に関して”は?、何言ってんの?”と笑い飛ばしてしまうところでしょうが、悲しいかな時代でしょうか、抗議する側もされる側も過剰に反応してしまいました。

個人的にはハッキリ言って無視しておけばよかった些細な問題だと思います。

それはなぜか?。そもそもこの抗議したLGBTの団体というものがLGBTの人たちの代表や代弁者ではないからです。

僕も勉強不足というか関係する機会がないので団体についてはどういった活動や支援をしているかは知りませんが、おそらく目的としては肉体と精神のギャップに苦しむLGBTの人達が職業差別や地位向上など人権問題に苦しむ人達へのサポートや拠り所を目的としているはずで、存在そのものは意義あるものだと思います。

ただ、この団体が実際にすべてのLGBTの人達に支持されているかというと、全くそんなはずはないわけで、ただの有志連合の集合体、例えば鉄道オタクなんかに例えると、勝手に意識高い系の人たちが集まって”全国撮り鉄地位向上委員会”を組織しているようなもので、そっち方面の人達からすれば、勝手にやってるなぐらいの存在だと思います。

ま、言うなれば労働委員会など強固な組織ではまったくなく、部活や委員会などでもなくただのサークルのようなものですよね。

だからLGBTの支援団体が怒っていると言っても、大多数のLGBTの人達が怒っているかというとまったくそうではないような気がしますし(最近は近くにそういった人がいないので実際には分かりませんが・・・)、BPO(放送倫理・番組向上委員会)に寄せられるような笑ってしまうような抗議(例えばもこみちの料理コーナーでオリーブオイルを使いすぎだというようなやつ)の一つとレベルは変わらないように感じます。

だからいくら性的な問題という一見重たそうな問題とは言え、それを旗印に抗議されても放送局はドンと構えておけばよかったのだと思います。

昔のフジテレビであれば、こういった問題に関して笑って済ませられるような胆力みたいなものを感じましたが、よっぽどスポンサーや世間の目が気になるのでしょうか、ブレブレもいいところであり、こういうのを見ていると僕がライバル局だったら、部署を作って抗議しまくってやろうかと考えてしまいますね。

それぐらいフジテレビは縮みあがっているような気がしますし情けないところです。

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社長が謝罪するという意味

今回トップが謝罪することになりましたが、個人的には”これでテレビは終わったな”と感じました。

もちろんフジテレビのみの問題ではありますが、おそらく今後の局としての番組作りに関するコンプライアンスはより縛りが厳しくなるはずです。例えそういった通達がこないにしても、最終的に内容をチェックするフジテレビのプロデューサーは結局会社員です。

確実にあたりさわりのない番組内容にしていくのは目に見えているでしょう。

お笑い番組についてはある放送作家の方が以前分析されていましたが、結局笑いというものは誰かを貶める(ネタにする)ことにより自然発生すると言っていましたがその通りだと思います。

例えばアメトークなどに関して言えば、マンガ系の芸人会などではマンガを知らないホトちゃん(蛍原)が何にも知らないことが面白かったり、好きなはずなのに少しニワカ臭を漂わせている人物がいたり、逆にマニア過ぎてちょっと怖いなど、まわりとは少し違った異常さがおかしかったり、宮迫(博之)がうまく拾って回しているわけですが、どこかに笑われる対象が存在するわけです。

そういった点から見ると、その程度に差はあれホモをおかしく演じる登場人物さえ使用不可能となると極端な話、ハゲやニキビ、身体的なちょっと特徴さえネタにするのが難しくなってきたりします。

最近はドラマ内での喫煙シーンやCMでビールを極々飲むノドのアップさえ慎重になっているといわれているぐらいですし、昔あったお色気シーンなどが最近全く見なくなったのも自主規制のいい例でしょう。

インターネット番組の躍進の予感

最後に、今回の謝罪はこういった作り手の選択肢をさらに減らす転換期になるのではないかと心配でなりません。いずれテレビではハゲヅラさえも使えない時代がくるのではないかと心配していますが、若い健康的な人間が年寄りを面白おかしく演じてみたりすること、つまりは昔のドリフや現在の吉本新喜劇の舞台さえも、今後は抗議するようなアホが出てきそうな気がしてしまいますが、これを時代の流れとかたづけてしまっていいものなのでしょうか。

今回の問題に関して、インターネット上では多数の擁護派はいますが、抗議や謝罪は当然とするコメントもいくつか見て取ることができます。

こういった問題はお役所が罰則を振りかざすまでドンと構えておけばいい問題だと思いますが、何でもかんでも世間の少数派の意見に振り回されているようでは、当然のごとくテレビは面白くなくなってしまいます(すでに面白くないですが)。

今回の事件で、個人的にテレビは終わったと思ったので記事にしてみましたが、インターネット番組がテレビ番組とってかわるいいきっかけになるのでしょう。

あと、フジテレビの社長さんの交代が今回いいものではないことがよく分かりましたが、AbemaTVなどですでにサイバーエージェントと組んで先進的なコンテンツに挑戦しつつあるテレビ朝日のほうが、一歩も二歩も先に進んでいるような気がしてなりませんが、”面白くなければテレビじゃない”と言ってたフジテレビはどこにいってしまったのでしょうか。