あれ?マンガ原作はこんなに面白かったっけ?
アニメ「炎々ノ消防隊」(えんえんのしょうぼうたい)が面白いです。
作品の詳細は後述するとして、今年の夏クールから2クール(約24話)にわたって放送されているこの「炎々ノ消防隊」、このクールの作品の中では目立って面白いと思います(と言っても気になった作品しかチェックしていないませんが・・・冒頭から同じこと二回言ってしまったw)。
視聴前の期待感から言うと完全に掘り出し物だったわけですが、つまるところ、まったく期待していませんでした。
というのも、原作が週刊少年マガジン(講談社)なので、内容はある程度知っていたのですが、序盤で自然に興味が薄れてしまい読むのをやめてしまっていた作品だったわけです。
連載開始当初は、ある程度画力やストーリーのしっかりとした作品がはじまったという印象だったんですが、何となく徐々に足(目)が遠のいていってしまってました。
自分としては週刊少年ジャンプの「ワールドトリガー」以来の痛恨の見誤りだったのですが、今回はこの「炎々ノ消防隊」をアニメ版を中心としながらご紹介したいと思います。
(画像引用:アニメ「炎々ノ消防隊」公式サイトならびにYouTube公式チャンネルより)
Contents
「炎々ノ消防隊」とは
炎々ノ消防隊とは2015年9月から週刊少年マガジン(講談社)で連載されている、大久保篤(おおくぼ あつし)先生原作によるマンガ作品となります。現在も連載中です。
2019年からはTBS系でアニメ化(2クール)され、放送中・配信されています。
あらすじ
舞台は現在の日本を連想させる東京皇国、太陽暦佰九拾八(198)年。
この世界は突如各地で始まった人体発火現象”焔ビト(ほむらびと)”に悩まされていました。
自ら発火した炎に包まれ自我をなくして周囲を焼き尽くす”焔ビト”でしたが、この現象と同時に発現したのが、炎を操ることができる能力者でした。
それまでの人類を第一世代、炎は発することはできないもののそれをコントロールできる人間を第二世代、さらに自ら炎を発しそれをコントロールできる人間を第三世代とよび、東京皇国は”焔ビト”に対抗するために能力者を中心とした特殊消防隊を組織します。
ヒーローに憧れる主人公の森羅 日下部(しんら くさかべ)は十七歳の少年で、新設されて間もない第8特殊消防隊に配属されます。
彼も第三世代とよぼれる能力者で脚から自由に炎を発射し、それを利用した戦闘や空中移動などを行う能力を持ちますが、約十二年前、五歳の時に彼は自宅で火事にあい、母親と生まれたばかりの弟を亡くすという過去を持っていました。
彼はすでに能力者であるは知られていたため、発火原因として周囲から、”悪魔”として軽蔑されますが、そんな目に負けず彼は真っすぐと前だけを見て成長します。
それは自ら遭遇した火事の中で、角を持った”焔ビト”がいたことをかすかに覚えており、自分と同じ被害者を出さないために特殊消防隊を目指したのでした。
そんな彼は消防学校を卒業して変わり者揃いの第8消防隊に消防隊に出勤しようとした初日に、駅で”焔ビト”と遭遇します・・・。
といった感じのお話です。
マンガ(原作)とアニメ何が違うのか?
さて、ここからが感想となりますが、まずはやっぱりなぜこの原作をマガジンで読まなくなったのでしょうね。
アニメを見てがっつりハマっている今となっては恥ずかしい限りで、今は慌ててマガジンなどでチェックするようになったのですが、ちょっと自分なりに分析してみました。
すると見えてくるのが練りこまれ具合です。
原作の弱点をうまく足し引きしている
自分でも多少第一話を見比べてみたのですが、原作とアニメでは一部のセリフやナレーションみたいなものがカットされています。
最初から2クールしかないのは分かっているので、尺などの関係で削らなければいけないセリフやシーンは当然あったのでしょうが、セリフなどが削られている分、ストーリーはスムーズに進行しているような印象を受けます。
改めて原作を読むと当然アニメで見た時よりはゆっくりと話が進んでいる気がしますね。
また、セリフなどが削られている分それらを表情や動きなどでカバーしているのがアニメです。当然と言えば当然なのですが、今このシーンで何が重要なのかしっかりとわかった上で作られており、アニメスタッフの原作に対する理解度がかなり高いことが分かります。
たまにある”どうしてこうなった?”と思わせるアニメとは雲泥の差に感じる本気度です。
そして原作では若干弱点であった画面の忙しさ・窮屈が、アニメで色や動きがついたこともあり解決してます。
画は細部まで描けており、ウマい部類に入る原作なのですが、コミックではコミック用に描きなおされているものの、雑誌連載時点ではどうしてもゴチャゴチャ感を感じます。(コミックスはかなり画は見やすくなっています。)
その中で戦闘が行われたり、炎がドッカンドッカン出てくるので、どうしても魅せるという部分ではかなりのテクニックを要するタイプの作品ではあるわけです。
そうするとどうしてもライトな層や初めてマガジンでこの作品に触れた層には取っつきにくさが生まれてしまうのでしょう。
これは僕が比較的速読派なのも理由だったのかもしれませんが、アニメによりテンポや間も追加されており、これが原作の良さをうまく引き出したのでしょう。
作品の主人公である炎が躍動している
そしてアニメ化成功の理由は、この作品の肝である炎が熱をもって描かれている点でしょう。
やはり原作の二色では表現できない炎の温度や揺らぎをこれでもかというぐらい気合を入れて描かれており、画面から感じる熱や汗、灰や緊張感などが十二分に伝わってくるので、よりストーリーに深い演出が加えられているという印象で、まさしくアニメにピッタリの作品だったと思います。
これは原作者の技術どうこうというよりも、原作者が本来やりたかったことをそのまま体現したと言え、素晴らしい進化をさせたと言えますね。
どこぞのマンガ原作のアニメに爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいものです。タイトルは言いません(笑)。
世界初?王道系SF消防士マンガ
アニメとは関係なしに作品の内容について触れておくと、消防士マンガと言えば、曽田正人先生原作の「め組の大吾」(週刊少年サンデー:小学館)が思い浮かびますが、こちらはさらに能力バトルという消防士とはまったく関係のない斜め上を行く要素が追加されています。
作品のジャンル自体は週刊少年ジャンプで連載中の「僕たちのヒーローアカデミア」(以下ヒロアカ)そのものなのですが、ヒロアカがどこかアメコミ的要素をオマージュしながら、展開させているの対して、こちらは能力バトルという要素はあるものの、あくまで炎に焦点を絞ったことによって、よりオリジナル感が出ているように感じます。
若い子だとあまり感じないかもしれませんが何十年もマンガを読んでいると、どこかで見たキャラクター・展開というのは最近のマンガでは往々にしてあるわけで、”次はどうなるんだろう?”という、マンガとしては当たり前でありキーとなる部分がしっかりとこの作品に備わっており、この作品をすばらしいものに引き立てているように感じますね。
登場人物たちのバックボーンがしっかりと設定されている
そしてヒロアカと再び比べるのは申し訳ないのですが、あちらがどこかご都合主義に感じるのに対して、こちらは登場人物たちのバックボーンや信条などが隊ごとに違ったり、はっきりと分けられているので、対立の構図や動機、行動などを素直に受け入れることができます。
ヒロアカのようになんで学生ヒーローが大人のヒーロー差し置いて大活躍しとんねんという、そもそものツッコミなど、余計な部分でストーリーから興味を失わせることなく展開していますね。
また焔ビトや人体発火現象とは一体何なのか、それぞれの隊は敵か味方なのかや、色々な面で明らかになっていない要素もうまく存在しており、大人が読んだり、見ても十分楽しめるアニメ・マンガだと思いますね。
“おススメのアニメない?”と聞かれると中々簡単には出せない作品が多いのですが、この作品は誰にでも”まぁまぁ面白いよ”と出せる作品ですね。
マニアからライト層までおススメできます。