不動産売買をしていた僕がプロの立場から解説
不動産や金融関連の話になるとよく話題になると言ってもいいのが、「賃貸」か「持ち家」かという問題です。
社会人で独り暮らしをある程度してきた人や、結婚して家族が増え、それまでの住居が手ぜまになってきた人であれば、そろそろ「賃貸」からの脱却して夢のマイホームという方も多いでしょう。
また、まったく意識していなかったのに、ポスティングされていた新築マンションのチラシなどを見て、突然
”家賃を一生払い続けるのももったいないし、「持ち家」もアリかな?”
と、意識し始めたことがある方もいるのではないのでしょうか。
そこで今回は、(知っている人は知っている)元不動産屋で不動産売買をしていた僕がこの問題について解説してみたいと思います。
まぁ今でも取引は可能な状態にはしているんですが、メインの生業にはしていないので、元って言い方しています(笑)が、ご参考にしていただければと思います。
Contents
僕の考えを語る前にまずは「賃貸」と「持ち家」のメリットを考えてみたいと思います。
「賃貸」のメリット・デメリット
やはり「賃貸」のメリットと言えば入居や引っ越しの手軽さでしょうね。最近は入居者の審査もあるようですが、転勤や家庭の事情などで急に引っ越しする必要があったときに、すぐに対応できるのが魅力です。
半面、契約している限り病気で仕事ができなくなっても家賃を払い続けなければいけないリスクはありますね。
メリット
- ライフスタイルに合わせていつでも引っ越しが可能
- ローン(借金)がない
- 固定資産税など住宅関連の税金が不要
- 住居設備の修繕は家主の負担で行える
デメリット
- 引っ越しのたびに敷金や礼金が必要
- 自宅のリフォームなどが自由に行えない
- 一生家賃を払い続けなければいけない
- 「持ち家」に比べると質が落ちる場合が多い
「持ち家」のメリット・デメリット
「持ち家」のメリットは自分の所有物なので好きなように出来る点ですね。
ペットを室内で飼うのも自由ですし、庭で野菜を栽培など思い通りになるのが魅力です。
デメリットは初期費用をかけすぎると売る時に大分マイナスになり、そこに根付く覚悟がいることでしょうか。
メリット
- 自分の物なので自由にリフォームなどが可能
- 社会的な信用を得られる
- 大病を患ったり万が一死亡した場合、住宅ローンに付随してくる団体信用保険でチャラになるケースもあるので、残された家族は安心。
デメリット
- 隣人に変な人がいた場合、簡単に引っ越しが行えない
- 固定資産税などを一生払い続けなければいけない
- 初期費用としてある程度の金額が必要
- 銀行から融資が下りないケースがある
- 分譲マンションの場合、管理費や修繕積立金が一生必要。また金額が徐々に上がってくる場合がある
- 築年数が経っているとどうしても設備面で古さが否めなくなりリフォームが必要
- 資産価値が徐々に減少していく
僕は「持ち家」推奨派です!
いきなり結論から書きますが、僕はズバリ「賃貸」よりも「持ち家」をおススメします。
よくテレビやインターネットでこの話題になると、FP(フィナンシャルプランナー)の方や不動産関連の人が「賃貸」を推しているケースは多いと思います。
こういった人たちは、大体のケースとして、総支払額や固定資産税などの税金の総額を考えると「賃貸」のほうが「持ち家」より総支払額・負担額が若干少なくなり、お得になりますと言っていることが多いですね。
この話題はよくテレビなどのネタにされることも多いせいか、ネット上でも”やっぱり賃貸最強”とか”マイホームでローン地獄”と揶揄している某掲示板民の人たちも結構存在したりしますが、個人的には、この考え方に一部は理解できるものの、所詮”机上の計算”というのが不動産売買をしてきた上での僕の感想となります。
ではなぜ不動産売買をしてきた僕が「賃貸」推しではないのか説明していきたいと思います。
”超”都市部と地方都市では全く状況が異なる
まず、そもそも論になりますが、テレビやネットで「賃貸」推しのFPの人たちが説明するモデルケースでおかしいなと感じる部分が、「持ち家」を購入した場合の設定金額の高さです。
今回ある程度似たような記事も文章の構成の参考にするためにいくつか見てきたのですが、いずれも設定金額は5000万円とか6000万円に設定されていました。
もうこの部分でおかしいですね(笑)。
ここでおかしいと感じないのは東京や神奈川、大阪近郊などかなり大きな都市の中心部に住んでいる人たちなのだと思いますが、一般的な地方都市、例えば僕の住んでいる松山なんかだと、市内中心部から車で10分の距離でも、半分の3000万円ぐらいの金額をだせば結構立派な住宅の購入が可能です。
しかもこれは戸建のケースで、マンションであれば市内のど真ん中に住めます。
「賃貸」派が「持ち家」を勧めない理由の一つに、地価の値下がりによる資産価値の目減りなどのリスクを上げるケースもありますが、地方都市の場合ではよっぽどのことがない限り、極端な地価の上昇や下落とは無縁です。
東京や大阪などでは5000万円で買ったマンションが一年で半分以下の価値になったとか、逆に倍になったというケースも聞きますが、地方都市やよっぽどの都市部ではない限り、元々の資産価値と実勢価格に乖離がなく、こういったリスクも減ってくるわけです。
だから、みなさんがまず気にしないといけないのは、自分が住もうとしているところがどういった場所なのかということであり、地方都市に住む人がうっかりテレビやインターネットに感化されて安易に”やっぱり賃貸!”というのは正解ではないわけです。
新築か中古か、建売か注文住宅か
次の問題は自分が住もうとしている(購入しようとしている)物件が新築か中古か、建売住宅か注文住宅であるかという問題があります。
FPの人たちがあげるモデルケースについてこの部分があまり触れられていないケースが多いのですが、ここもポイントです。
それは上でも多少触れましたが資産価値の問題です。
例えば戸建を例にとって考えてみますが、一般的な木造の戸建て住宅の場合、築25年も経っていればほぼ建物の価値はゼロとなりほぼ土地の代金で買うことができます。
この築25年の家を中古で1500万円(土地代)で買った場合、これからあと25年住もうとするとある程度のリフォームは必要になるかもしれませんが、25年後売ろうとした場合に(細かい税金などを考慮しない)営業損失で考えると、リフォーム代が赤字分にはなるものの、大恐慌でも起きなければ恐らく1500万円に近い金額では売れるので損失は少なくなります。
逆に、この戸建をもし新築の状態で3500万円で買ってリフォームして50年住んだことを考えると、損失は2000万円+リフォーム代になり計算上の損失は大きくなるわけです。
ただ、感のいい人やケチをつけたい人はここでピーン!とくる思いますが、
”築25年の家までを買うまでの25年分の家賃はどうなんねん!”
確かにそうでしょう。
しかしながらここで問題になってくるのが、元々が建売(買った時にすでに完成した状態だった)の状態だったのか、注文住宅で建築費や住宅メーカーと相談して建てた家で問題は変わってきます。
今回僕がモデルケースとして出した戸建は3500万円とし、上物(建物)の価値は2000万円に設定していますが、これは結構盛り目(高め)の金額にしています。
というのも建売住宅であれば上物は一千万円台の計算で買える物件もありますし、注文住宅で建てた家だと上物だけで簡単に三千万円近く行ったりします。
つまりは上物にお金をかけた「持ち家」であればあるほど目減り金額は大きくなるわけで、築25年の家を買うまでには当然注文住宅のような豪華な家に住んでいるはずもなく、この関係はイコールではなくなります。
自分で書いていて少し分かりにくい(笑)ので実際に計算して見ると、建物代2000万円を25年で割ると一年あたりで80万円、一月あたり6.6万円となります。
これも超都市部と地方で住める家は変わってきますが、この金額だと地方だと1DK~2DKぐらいのマンションか少し狭めの借家は借りれます。
資産価値がゼロになるという前提から考えると同じ金額を負担しながら「持ち家」だと結構いい家に住めていたのに、賃貸だと当然グレードは下がってしまい、結局何をやっていたか分からなくなってしまいます。
だからここで言いたいのは、注文住宅で建てたような建物の金をかけた「持ち家」であれば、資産価値の減少が大き過ぎるので、「持ち家」が完全にはおススメできなくなるし、買った物件の資産価値が今後それほどさがらない、もしくは「賃貸」していたのと同じぐらいになるようなら、「持ち家」にしたほうがいい家に住めるので、「賃貸」よりお得ということになります。
また不動産あるあるなのですが、注文住宅だとお金もかかっており、立派な住宅が多いのですが、そういった住宅も二十年ぐらいたってしまうともはや最新型の住宅に機能性で勝てる要素は少なく、二十数年経って高く売れると勘違いしてい売主さんが多く困ることは多々あるので、ぼくは注文住宅で家を建てるのであれば、あまり賛成はできません。
まとめると、付加価値(注文住宅)は時間が経ったり、買う人にとっては価値がなくなるので、そういう部分では「賃貸」もありというわけです。