再評価の動きがある始皇帝
秦の始皇帝と言えば、中国史上最初に皇帝を名乗った人物ですが、世界的に見ても恐らく最初の皇帝でしょう。
ヨーロッパと中国では皇帝そのものの概念が違うと思いますが、ヨーロッパでは王と皇帝にそれほど違いはないのに比べて、中国は王の上に皇帝が来るというのが正しいイメージでしょうか。
さて、この始皇帝ですが、実はその研究が進み始めたのは中国の長い歴史を考えると思いの他最近で、1974年の兵馬俑の発見がきっかけだったと言われます。
それまでは司馬遷が書いた史記などによりその存在は知られていたものの、それを証明するような実物が見つかっていなかったのは有名な話ですが、やはりそれを証明するものや資料があってこそその研究も進むというものでしょう
また、始皇帝について自分なり調べてみると、最近になって盗掘されてなくなっていたであろう一部の木簡などが市場に出回り始めたとも言われており、新たな始皇帝像が確立される可能性も十分考えられますね。
そこで今回は最近某マンガでも熱い、始皇帝が登場する(しそうな)マンガをピックアップして紹介してみたいと思います。
※今回は始皇帝が登場するマンガをいくつか紹介しようと思いますが、実は当初の企画では思いつきで始皇帝にクローズアップして記事にしようとしていました。
ただ、いつものパターンだと掘り下げるために改めて調べなおしていくと、色々聞いたことなかった事実なんかが出てくるのですが、今回はほとんど何もでません(笑)。
つまり、知っていることばかりだったわけです。
それじゃツマランし、読んでても面白くないということで慌てて方向転換したのが事実なんですが、このままこのページを潰すのももったいないかなと思っての無理やり(笑)の記事となります。
Contents
「キングダム」
掲載誌:週刊ヤングジャンプ(集英社) 作者:原泰久 ※現在連載中
作品の内容と個人的な感想・評価
ご存知「キングダム」ですが、メジャーなマンガで始皇帝を主人公側で描いた最初のマンガでしょうか。
非常に面白く、僕も大好きな作品ですね。
天下の大将軍を目指す主人公信の親友政(始皇帝)として度々登場し、主人公に次ぐ扱いとなっていますが、聡明な王として描かれていますね。
作品の面白さに文句のつけようはありませんが、問題は果たして作者が生きているうちに作品がちゃんと終われるかだけでしょうね。
あと統一後まで行ったとして水銀飲むのとかはどう描かれるのか気になります。
「劉邦」
掲載誌:ビッグコミック(小学館) 作者:高橋のぼる ※現在連載中
作品の内容と個人的な感想・評価
ビッグコミックスピリッツで連載中の人気作品「土竜の唄」で有名な高橋のぼる先生が現在ビッグコミック(月二回発売)で連載中の作品です。
舞台は秦が統一したあとの中国が舞台となっており、主人公は漢を建てた劉邦です(タイトルにもなっていますね)。
まだライバルの項羽が出てきたばかりの展開で話としてはこれからといった内容なんですが、肝心の始皇帝は、よくある”マッドエンペラー”(笑)始皇帝で登場します。
マンガの内容はよくある項羽と劉邦の話なんですが、テンションが「土竜の唄」のまんまなので好き嫌いがありそうな内容にはなっていますね。
個人的には特別に真新しい設定や描写があるわけではないので、少し中途半端な印象があります。
項羽と劉邦の話を知らなかったり「土竜の唄」が好きな方には合うかもしれませんが、歴史好きな方は横山光輝先生の「史記」のほうがいいと思います。
「史記」
作者:横山光輝 ※完結済み
作品の内容と個人的な感想・評価
30代から50代の男性なら一度は目にしたことあると思う「三国志」の作者横山光輝先生が1990年代後半書いた歴史作品です。
内容は司馬遷の史記を題材として書かれており、戦国時代から漢までの内容を抜粋する形でマンガされています。
そのため始皇帝や秦の話もオムニバスの一つのような形で登場しますが、戦国時代の流れなどが順番に描かれているので、統一に至るまでの流れやライバル国の有力者や有名人にどういった人がいたなどが知ることができます。
僕が大人になってから書かれた作品なんですが、内容は史記を題材としているだけあって、漢文のテストに出てきそうなモノもあるので、お子さんに受験生がいる方は買ってあげることをおススメします。
テンションは「三国志」と同じですが、若干ストーリー性が薄いので箸休め的な作品って感じですね。
「項羽と劉邦」
作者:横山光輝 ※完結済み
作品の内容と個人的な感想・評価
上の「史記」を書くまで存在を忘れていました(笑)が、そう言えば横山先生「項羽と劉邦」も書いてました(最後のほうで思い出した)。
ストーリー性はこちらのほうがあるのでマンガとしては「史記」よりは面白いですね。
始皇帝はどういった登場したかは忘れました(笑)。
出ていないはずはまずないです。
「赤龍王」
赤竜王―本宮ひろ志傑作選 (1) (集英社文庫―コミック版)
作者:本宮ひろ志 ※完結済み
作品の内容と個人的な感想・評価
1980年代中盤の作品ですが、僕もリアルタイムで週刊少年ジャンプで読んでいましたね。
中身は項羽と劉邦の話で劉邦が主人公だったはずですが、完結はしているもののかなり打ち切りぽかった最後だったような記憶があります(昔の作品なんでうろ覚えです)。
ただ、本宮先生としてはかなり油が乗った時期の作品なので、絵に非常にパワーがあってみごたえは十分です。
確か、黥布がなんか石を投げて始皇帝の暗殺を放ったシーンなんかがあったのを覚えていますが、この作品で間違いなかったですよね?僕と同世代で覚えているおっさんの方いたら教えてください(笑)
始皇帝は本宮作品でよく出てくる怖いおっさんで描かれていたと記憶しています。
「達人伝-9万里を風に乗り-」
達人伝 ~9万里を風に乗り~(1) (アクションコミックス)
掲載誌: 漫画アクション(双葉社) 作者:王欣太(きんぐ ごんた) ※現在連載中
作品の内容と個人的な感想・評価
この作品は中国の戦国時代末期のお話となりますが、時代としては秦の始皇帝が生まれる前後のお話となります。
僕はコミックスでチマチマ読んでいるので、まだ読んでいる巻では、後の始皇帝となる政は確かまだ出ていなかったはずなんですが、現在の巻数的にはもうすでに出ているはずです。(奇貨居くべしで有名な呂不韋はすでに出ていたのはよく覚えているんですが・・・)
この作品が他とは違うところは主人公が荘子の孫である荘丹(そうたん)という人物という点で、戦国時代の四君と呼ばれた人たちが登場し、七雄最大の秦に立ち向かうというお話です。
しかもラスボス的なキャラとして「キングダム」で伝説的な人物と紹介されている白起などが登場してくるのですが、時代背景的には「キングダム」の舞台の少し前の時代の話なので、前日譚として楽しむことができます。
作者の王欣太先生は「蒼天航路」で有名な先生ですが、作品のノリは完全に「蒼天航路」ですね。
ただ、登場人物の知名度や具体的にどういったタイプの人物だったか一般世間には浸透していない人ばかり登場してくるので、どうしても「蒼天航路」ほどは入り込めないのが残念なところです。
マンガのポジション的にはやはり「キングダム」を読んである程度戦国時代の知識をつけた後に、その前の時代はどういった時代だったのかを楽しむような作品ですね。
主人公のキャラクターも若干弱いので、「蒼天航路」を期待すると若干残念な感じがします。
つまらなくはないけど、とびぬけて面白いかというとそうでもないという感じでしょうか。
龍帥の翼 史記・留侯世家異伝
龍帥の翼 史記・留侯世家異伝(1) (講談社コミックス月刊マガジン)
掲載誌:月刊マガジン(講談社) 作者:川原正敏 ※掲載中
作品の内容と個人的な感想・評価
他にも始皇帝が登場するマンガはあると思います(思い出したの並べているので・・・)が、最後は現在月刊マガジンで掲載中の「龍帥の翼 史記・留侯世家異伝(りゅうすいのつばさ りゅうこうせいいいでん)」です。
この作品の主人公はのちに秦を倒し漢を建てた劉邦の軍師張良です。
ストーリーとしてはすでに秦が統一から二年たっており、お話としては「項羽と劉邦」の話をベースにして、張良の視点から秦の打倒を目指すような流れになっていますが、歴史の事実をベースにしながらフィクションを加えていく感じですね。
雰囲気は「海皇紀」と「項羽と劉邦」が合体したような印象なんですが、個人的な作品の感想としては、主人公張良が伝説の軍師として無双するわけではなく、謎の赤ちゃんや護衛の超強い男(「海皇紀」のトゥバンサノオみたいなのが出てきます)メインで話が進むので、何となく主人公のキャラクターが弱い感じがします。
そういった部分で感情移入がしにくいのが残念なところではあるんですが、加えて、完全なフィクションでいい意味で展開が読めなかった「海皇紀」と、歴史的事実として展開の読めるこちらの作品では、雰囲気が同じということを考えると、どうしても前者のほうが魅力的な作品のような印象を受けます。
ちなみに、タイトルの一部にもなっている留候とは何かと思って改めて調べてみると、張良が漢統一後に封ぜられた土地にちなんだ呼び名のようです。
そう言えば、始皇帝は序盤にほんの少ししか出ません(笑)。