「蒼天航路」:このマンガが面白い(8)

「三国志」と言えば中国の後漢末期から滅亡後の混乱期を描いたお話ですが、実は中国人よりも日本人のほうが内容について詳しいというのをご存知でしょうか。恐らく日本では小説やマンガ、ゲームなどの影響が大きいとは思いますが、日本人が自国の歴史の中で戦国時代だけよく武将などの名前が知られているように、中国でもどちらかと言えば「水滸伝」などの舞台となった宋代のほうが人気があり、認識されているようですね。

さて今回は三国志を題材とした「蒼天航路」というマンガのご紹介ですが、みなさん三国志と聞いて思い浮かべるのはNHKの人形劇でしょうか、横山光輝先生のマンガ「三国志」でしょうか?それとも吉川英治先生の小説版でしょうか。

これらの作品の共通点は主人公が蜀の劉備玄徳というところですが、今回取り上げるマンガの「蒼天航路」の主人公はなんと劉備の最大のライバル曹操です。

20年前はガッツリほぼすべてのマンガを読んでいたことはどこかで書いたと思いますが、そんな時代にトップ3に入るぐらい好きだった「蒼天航路」をついに取り上げます。

ちなみに現在のマンションに引っ越した後も捨てずに持ってきた数少ないマンガです。

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「蒼天航路」とは

蒼天航路1994年から2005年まで講談社の週刊モーニングで連載され、原作・原案は韓国出身の李學仁(イ・ハギン)さん、作画は連載当時ほとんど無名であった王欣太(きんぐ・ごんた:多分日本人です)先生にによる作品です。(画像引用:講談社「コミックプラス」より)

残念ながら原作の李さんは連載途中で亡くなりますが、その後は原作を作画の王先生が引き継ぐ形で連載が行われました。

有名な横山光輝先生のマンガ「三国誌」をはじめ、ほとんどのマンガ・小説がいわゆる読み物である「三国志演義」をベースに描かれているのに対し、この「蒼天航路」という作品は正史「三国志」やその他さまざまな歴史書に近い資料を題材に描かれており、主人公が曹操であるほか、聖人君主で人格者のイメージ強い劉備を任侠集団の親分として描くなど、これまでの三国志のイメージをひっくり返す作品です。

天才軍師諸葛亮孔明もこの作品の中ではド変態に描かれています(笑)が説得力たっぷりです。

あらすじ

曹操の幼少期から物語は始まり、序盤は後漢の名門の出身袁紹との関係や大宦官の孫とは言え、力をもたない曹操がいかに力や人材を得ていくかが描かれます。

幼少期から青年期に至るとあの悪名高い董卓や呂布が登場し、いかにこれを倒していくかなどを描かれますが、この過程であの劉備玄徳や関羽・張飛も登場します。

・・・と書いてて気づきましたが、内容はみなさんの知っている三国志のままですね(笑)

ということですっ飛ばしますが、曹操が死ぬまでが描かれます。

みなさんが知っている三国志との違いはピークが赤壁の戦いではないということや、曹操やその子供たちが何をやったか、政治的なことや文化的なことも描かれているのが最大の特徴になります。

もしかしたら面白くないかも(笑)

いきなりタイトルとは真逆のことを書いてしまいましたが、本当に人によっては面白くない(フツーの面白さ)作品かもしれません。

というのも、この作品の面白さは独特の絵柄も魅力の一つではありますが、やはりこの作品の最大の魅力は、いかにみんなが知っている”悪役”曹操のイメージを、有名なエピソードや武将を登場させながら、理路整然とぶち壊していくか最大の魅力だと思います。

そういった点で、三国志の話の大体の流れや主要武将(関羽や張飛ぐらいだけではダメ)などを知っていないと、ああこの武将はこんな描き方をされるのか!とニヤリとできる部分がどうしても減ってしまいます。

そういった点で、横山光輝版「三国志」は最低読んだ上で、この「蒼天航路」を読むことが最大限にこの作品を楽しむうえでの必須項目でしょう。(ま、読んでなくても平均以上に面白いとは思いますけど)

あと、できれば僕のようにKOEI版シミュレーションゲーム「三国志」シリーズや「三国無双」シリーズなども当然コンプリートしておくこともおススメしますね。(そういえば吉川英治版先生の小説「三国志」やNHKの人形劇もリアルタイムで見てます:あ!全部か(笑))

以上のように三国志を知っていれば知っているほど面白さは全開な作品となります。

作品中のお気に入りキャラクター

楽進(がくしん)

魏の武将ですが、どちらかと言えば奇抜なキャラクター設定の登場人物が多い中、趙雲と同じぐらい性格がまともな数少ないキャラクターの一人でしたね。

愚直な武将として描かれていますが、彼を部下を慕い”この人を死なせてはいけない”となるシーンなどは胸熱であり、それでも前に進む楽進も魅力的でしたね。

対比としておバカキャラの徐晃(じょこう)も面白かったですね。

このようにこの作品の魅力は時に楽進のような配下武将がピックアップされ描かれるなど群像劇的なところもよかったと思います。

孫権(そんけん)

呉の三代目君主ですが作品中は親友の仁(虎です(笑))の死に喪に服すなど、魅力的なキャラクターとして描かれていますね。

呉の武将は頭の固い文官と明るいならずものの武官達がいる国として描かれていますが、それを率いる感情豊かでありながら芯のしっかりしている三代目としてちゃんと描かれているので、曹操や劉備のキャラクターに負けることなくキャラクターがしっかりと立っていたのがよかったです。

太史慈が仲間になるあたりの話も、孫権がいい味だしていて面白かったですね

甘寧(かんねい)

呉の中でも有名な武将ですが、まさか目つきの悪いひげのおっさんとして登場したのは予想外でした(笑)

作中でも無敵の強さをほこりましたが、セリフがほとんど無かった(しゃべったことあったっけ?)割に、インパクト絶大キャラでしたね。