「響 〜小説家になる方法〜」:このマンガが面白い(7)

今回僕が面白いと思うマンガとして紹介させていただくのは、現在小学館のビックコミックスペリオールで連載されている「響 〜小説家になる方法〜」という作品です。

ビッグコミックスペリオールと言えば、ビッグコミック系の雑誌としてビッグコミックスピリッツとビッグコミックの間にあるような作品ですが、かつては「AZUMI」などの大ヒットマンガを生み出したりしたものの、池上遼一先生や西原理恵子先生などの安定したファンをもつ定期連載意外は、比較的万人受けのするHIT作の少ない若干コアな雑誌でしたが、その中から久々のスーパーヒット(になる可能性のある)作品が出てきたので取り上げました。

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最近スペリオールの発行部数も下がり、僕のように読む機会の少なくなった方も多いと思いますが、みなさん今のスペリオールは池上マンガと西原マンガだけの雑誌ではありません。

この「響 〜小説家になる方法〜」という作品が現在のスペリオールのエース作品と言ってもいいでしょう。

「マンガ大賞2017」大賞受賞作品

まずこの「 〜小説家になる方法〜」ですが今年の第10回「マンガ大賞2017」の大賞作品に選ばれました。

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以前の記事では「マンガ大賞」とともに「このマンガがすごい」で選ばれている作品がどういった選ばれるのか調べたことがありますが、このマンガ大賞に関してはほとんど利害関係のない選考委員による完全に読者目線の投票で選ばれているので、比較的信用できる賞だと思います。

ただ去年は大賞に「ゴールデンカムイ」が選ばれたり、以前に取り上げた「Blue Giant」が大賞にならなかったなど、たまに若干納得がいかない(「ゴールデンカムイ」はつまらないとは思いませんが大賞をとるほどの作品ではないと思います)ことがありますが、個人的に賞モノの中では一番参考になる目安な気がします。

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「響 〜小説家になる方法〜」とは

この作品は柳本光晴(やなぎもと みつはる)さんという方が作者なんですが、インターネットで調べてみてもあまり情報が出てこない方なので、この作品が本格的な定期連載作品だと思われます。

一発目からこれだけの作品を生み出すとは今後の作品にも注目が集まりますね。

あらすじ

いつものように僕なりの言葉で説明しますと

舞台は不況著しい出版社業界の中でもさらに厳しい部署である小説雑誌の編集部から話が始まります。そこの出版社の賞宛に差出人も住所も書かれていない一つの作品が送られてくるわけですが、その作品を読んだ若手編集者や編集部、さらに現役小説家で構成される審査員たちは、歴史を変えるかもしれないその小説のクオリティに驚愕し、その作者探しをはじめるわけですが、その正体はなんと若干16歳の高校一年生の女の子だった!

というお話です。

絵は下手 でも圧倒的にストーリーが面白い!

早速この作品の感想を語って行きたいと思いますが、絵は下手です。多分僕よりデッサンは下手だと思います(笑)。(僕、昔は人物画とかの墨汁割りばしペンの一発書きが得意だったもんで・・・)

ただ、この作品にはそれを圧倒するストーリーの面白さがあります。かつてサッカーの中村俊輔がスコットランドのセルティック時代に監督のストラガンにこう評されていました。

中村はタックルができない。ヘディングもできない。それがどうした。彼は天才だ。

はい、まさしくこの言葉とピッタリシンクロする作品だと思います。

恐らく絵だけ見るとですね、若干二次元が好きそうな人が好きそうな絵柄で、いきなり取った雑誌で読もうかな?と思わせる作品ではないと思います。

また色んな表現がでてきますが、全体的にはまとまっているものの、一番書きやすい(これは僕がそう感じるだけかもしれませんが)と思われる人物のデッサンが若干おかしいよなと感じさせる部分も多数見受けられ、まだまだ改善点は多いです。

ただ、それを補って補いまくるほどのストーリーのうまさがこの作品にはあります。

綿密に計算されたキャラ設定と展開

まずストーリーうまいなと思わせる点では、読み手が面白いと思わせるパターンとして色々あると思いますが、主人公が天才、でもそれが周りの一部に知られてなくもどかしい。

この基本的なムズムズするパターンがこの作品のストーリーのスタート地点にありますが、それが徐々に周りに認知され花開くという黄金パターンです。これは「Blue Giant」でも全く同じような流れであり、あの「Naruto」や「バクマン」にしても基本は同じようなパターンですよね。

次に予測不能な主人公の行動パターン。こういった小説物だと主人公がただの文学好きの高校生ということで恋愛などの要素を入れながら、時にほのぼの回などが入ってきそうなものですが、主人公がぶっ飛び過ぎているので次の展開が読めません。

予定調和で終わらないので次にどうなる?と読者心理を煽りますし、主人公が暴れることにより周りの登場人物がそれに合わせて勝手に動いているので、マンガな展開ですが違和感なく読むことができます。

三つめは少女マンガにありそうな嫉妬と友情パターンも盛り込まれている所もいいですね。男性向けのマンガだとこのあたりの心理的な駆け引きや嫉妬の要素を盛り込むのはあまりうまくない作品が多いとは思うのですが、このあたりの表現が秀逸な「三月のライオン」のように部長との友情物語や、変態(笑)のイケメン幼馴染との絡みなどは少女マンガのようでいて、深みを持たせることに成功しています。

他の印象的なシーンとしては伸び悩む中堅作家が偶然公民館で主人公と邂逅するシーンがありますが、(ネタバレするので書きませんが)「蒼天航路」の程昱の晩年のシーンや他のマンガでも時折使われるような場面があり、他のマンガのオマージュ(もしかしたら真似かもしれませんが)のようなものが出てきますね。

こういったシーンもしょっちゅうあればイヤらしいものですが、たまにあると何か心地よさみたいなものがあります。

以上ストーリーに関しては他にも色々面白い要素はあると思いますが、個人的には相当計算されて描かれているようなストーリーであるように感じます。

このあたりは思いつくままにストーリーを考えたというよりも、作者が色々な種類のマンガを読んだ上で面白い要素をうまく調合したような印象があり、センスというよりも分析力に乗ったマンガのような気がします。

ストーリーとしては今まで読んだことないような奇想天外な話ではありませんが、色々なエッセンスが自然と色々な部分に組み込まれおり、多分この作者は別の作品でも面白い作品を出してくるだろうなと思わせるような秀才タイプの作品ですね。

今の大人向けのマンガの中では「Blue Giant」に次いで、次の回が早く読みたい面白い作品だと思います。